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30.恋する幼馴染
奏汰 side
「それでね文化祭なんだけど去年は部室で2日間とも漫画喫茶をやったんだ、だから今年もそれでいいかな?」
「漫画喫茶ですか?」
「うん、部室にある漫画もだけどそれぞれ個人で人に勧めたい漫画とか持ち寄ってとりあえず見栄え良く並べて、簡単なお菓子とドリンクを配布するって感じでさ」
「良いですね!面白そう」
「確かこの辺に去年の写真が……おーあったあった!ほれ」
そう言って引き出しの中から数枚の写真を取り出し、部長が机に広げる。
写真の中では普段乱雑に並んでいる漫画が綺麗に整頓され、机や椅子が並べられており、部長、深月先輩、ヒロ先輩の他に3人、知らない生徒が写っていた。
「これってもしかして雅也先輩達の先輩ですか?」
「おう」
「因みにこの男の人が漫画研究部の創設者なんだよ」
「えっそうなんですか?じゃあこの部活って出来立てホヤホヤ……?」
「そーそー、俺達が1年の時に出来たんだよな、だからまだこの部活できて3年目って訳だ」
「だからまぁ、ゆるーく活動できてるんだけどね、顧問の先生もそんなに厳しい人じゃないから頻繁にやってこないしー」
「そもそも俺達顧問と、この部室で会った事ないんですけど……」
「だね、大体職員室にいるもんねー」
それで良いのか顧問?!
なんて思ったもののそれでまかり通って今まで来てるんだよな……
と、納得してしまう自分がいて段々思考が侵されていってる気がしないでもないがその事実からはそっと目を逸らした。
「あれ、こっちの写真の女の子達も部員なんですか?さっきの集合写真にはいなかったですよね」
「あ〜それはね……」
そう言った颯希の言葉に珍しく口を濁した深月先輩に二人揃って疑問符を浮かべ、次の言葉を待っていた次の瞬間
ガラッ
「よーっす、元気でやってるか後輩ども〜」
「みんなヤッホー、遊びに来たよー」
「うわぁ、相変わらず汚ぇな……」
なんて言いながら見知らぬ私服姿の男の人達が入ってきた。
いや、確かに知らない人達ではあるのだが俺の脳内でその顔は先程まで見ていた写真の中の人物達と一致して即座に正体を導き出したと同時に部長が立ち上がり、その人物達に駆け寄った。
「わー!匠海(たくみ)先輩!夏向(かなた)先輩!碧葉(あおば)先輩!お久しぶりですーーー!!」
「おー、いつもいつも元気だなー雅也は」
「先輩方、お久しぶりです」
「それに比べて深月は落ち着いてるよねー」
「本当に凸凹コンビだよ、お前らは」
「俺もいますよー」
「はは、裕も久しぶりだなー」
「お兄さん元気か?って、聞かないでもこないだテレビに出てたよな、やっぱすげぇな龍さんは」
「へへー、恐縮です」
う、わ……
何か先輩達が後輩してるのって変な感じだ……
そう思っているのは颯希も一緒だったようで2人して会話についていけずポカン、としてしまう。
そうして一通り会話が終わったのか今度は俺達の方へ顔を向け1番背の高い男の人がニッと笑った。
「で、こいつらが新入部員か」
「新入って言ってももう6ヶ月経ってますけどねー」
「ひーろー、細かい事は気にすんな!」
「匠海からしたらどんな事でも細かい事になるよね」
「それ言えてる」
「ちょっ夏向に碧葉まで酷くね?!」
あ、何だろ、このやり取り既視感が……
と思っていればグイッと一歩踏み出されて反射的に身体が下がりそうになったのをぐっと堪える。
「俺は遊馬匠海(あすまたくみ)。元部長だ。そんでこっちのおっとりしてるのが藤堂碧葉(とうどうあおば)」
「よろしくね~」
「こっちの目付き悪いのが榎並夏向(えなみかなた)」
「悪口かよ!たくっ、よろしく」
「あ、初めまして松永奏汰です。で、こっちが、」
「向井颯希です」
「奏汰に颯希ね、二人ともよろしく!」
「「はい!」」
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