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34.恋する幼馴染

 奏汰 side 「まー君お帰んなさーい!!」 「わ、ちょ、止めろよ!姉ちゃん!!」 「ん〜そんな可愛くないことを言うのはこの口かな〜?うりうり〜」 「だ、はらやめろって!!」 「あはは、変な顔〜って、あれ?みー君に、ひろ君、と後ろの2人は噂の新しい後輩君達かな?初めまして、いつも雅也がお世話になってます!姉の陽子です」  目の前の光景にポカンとしている俺達の方を振り向いてそう言った目の前の女性に固まったまま動かない俺と颯希を置き去りにして会話は続いていく。 「こんにちは、陽子ちゃん。相変わらず元気そうだね」 「みー君は相変わらず綺麗な顔してるね〜」 「お久しぶりです、陽子さん。覚えていて貰えて光栄です。で、こっちの2人が後輩の松永奏汰と、向井颯希です」 「「よ、よろしくお願いします」」 「うん、うん、よろしくね〜。2人とも可愛らしい顔していて化かしがいがありそうね」  そう言ってジリジリ近づいてくるお姉さんに俺も颯希も思わず後ずさりしてしまう。  けれどそんな俺達の体はガッシリ先輩達に固定される。  そうして現実逃避をするかのように何故こうなったのか、つい数時間前の会話に想いを馳せた。  〜数時間前〜 「奏汰、颯希、今日この後ちょっと時間あるか?」  そう聞いてきた部長の言葉に2人して顔を見合わせながら「空いてますけど……」と、応えた。 「よし!じゃあ俺の家行くぞ。俺の家」 「え?!雅也先輩の家ですか?」 「おう」  急な誘いに颯希も俺も驚くと同時に何故?と頭の中にクエスチョンマークが浮かぶ。  そんな俺達と部長のやり取りを見ていた深月先輩が笑いながら俺達の疑問に答えてくれた。 「今日ね、雅也のお姉さんが仕事から早く帰ってきているんだよ」 「雅也先輩の」 「お姉さん?」 「うん」 「それってレイヤーしてるってお姉さんですか?!」 「そーそー」 「え、それでなんで部長の家に行くことになるんですか?」 「ん?そんなの決まってるだろ」  そう言ってニヤリと笑顔を浮かべるヒロ先輩の言葉に背中に嫌な汗が流れる。  そんな俺の心情を察しているのかしていないのかキラキラした顔で口を開いた。 「奏汰と颯希の女装の練習の為だよ」  そして現在 「「「おぉ〜」」」 「いや、まさかこれ程までとは……」 「うん、去年の雅也とか先輩達みたいにはならないとは思っていたけれど……」 「なんて言うか、2人とも普通に可愛い……」  そう言ったヒロ先輩の言葉に部長と深月先輩が深く頷いた。  そんな先輩達の反応にお姉さんは満足気な顔を見せながら 「当たり前でしょ〜この陽子様がメイクしたんだから!まぁ、2人とも元が良いってのはあるんだけどね。ふふふ、にしても我ながら良い出来だわ〜。惚れ惚れしちゃう」  と言った。 「しにたい」 「そ、そうちゃん!気をしっかり持って!!」  地の底から響いて来るような声でそう呟きながらしゃがみ込めば隣で颯希が慌てるがそんな事に構っていられないほどに俺の心は羞恥心で埋め尽くされていた。  いや、去年の部長達みたいに似合わなかったとかなら全然良かったけどなんだよ可愛いって、我ながら鏡見て化粧の力ってすげぇって思っちまったよ!!  自分でそう思っちまったことに大ダメージ喰らったわ!!!  て言うかスカートってスースーして足元心許ねぇんだけど……  女子って毎日こんなもん履いてんのかよ……  すげぇな……  そうやって一人、思考の海に沈んでいる俺を置いてどんどん話は進行していく。 「颯希は顔が良いから絶対美人になるとは思っていたけれど奏汰がここまで化けるなんてね〜。颯希が綺麗系なら奏汰は可愛い系だな!」 「ぶふっ、止めてあげてください、雅也先輩、奏汰何かめちゃくちゃショック受けてるんでふはっ」 「ん?何でだ?似合ってんだから良いじゃねーか」 「あー、ね。奏汰、気持ちは分かるよ……」 「深月まで何だよー」 「ねぇねぇ、とりあえず当日もこんな感じで良いかな?」 「はい、お願いします〜」 「うん、うん、おけおけー!で、勿論ひろ君もみー君も今年もやるよね??」 「あはは〜」 「まぁ、給仕足りませんからね〜」  そう言いながらヒロ先輩がポンっと俺の肩に手を置き 「ま、諦めろって、な、奏汰!」  いや、無理っす!  と、心の叫びが口を突いて出そうになったのをなんとか押しとどめながら、恨めしそうに睨みつけた。

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