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36.恋する幼馴染
奏汰 side
「星雲祭だーーーーー!!」
「おー」
「ちょっとそうちゃん、テンション低くない?もっとやる気だそーよ!!」
「逆にお前はなんでそんなやる気に満ち満ち溢れているんだ?」
「えー、だってさクラス対抗リレーがあるんだよ!クラスのみんなと何か一丸となってやるのって初めてじゃない?だからちょっとワクワクするじゃん!そうちゃんだってアンカーなんだしワクワクしない?」
「いや、まぁクラス対抗リレーはそりゃ全力でやるつもりだしやる気はあるっちゃあるけど、やっぱ今日は運動部の奴らがメインの体育祭だしなぁ」
そう、今日は星雲祭1日目の体育祭。
今日の主役は各運動部員達であって俺達、文化部員は明日、明後日の文化祭が本番みたいなものだからあまり星雲祭が始まると言われたからと言って実感が湧かないのだ。
心の中でそうやってごちていれば先ほどまで爛々とやる気に満ちていた颯希の表情が少し曇る。
そして言いにくそうに口を開いた。
「そうちゃんはさ、」
「ん?」
「やっぱりどこか、運動部入りたかった?それこそ中学の時みたいにサッカー部とか……」
そう、伏し目がちに言われてその言葉に颯希の中で燻っていた小さな不安が垣間見えて、バカだなぁと思うと同時に颯希のデコに軽くデコピンをかましてやった。
「いてっ」
「バーカ、別にんな事思ってねぇよ。そもそも俺、運動部入れねーし」
そう言いながら入学式当日に深月先輩と交わした約束を思い浮かべる。
あの時は切羽詰まっていたし、自分のせいで乱闘騒ぎが起きるなんて言われて仕舞えばそんなもの一つ返事で頷くしかない。
「じゃ、じゃあその約束がなかったら?やっぱり運動部に入ってたんじゃないの?運動部に入ってたら今日の体育祭だって運動神経の良いそうちゃんだったらすっごく活躍してヒーローになってたかもしれないよ」
「確かに、運動部に入ってたらそんな未来も楽しそうだよな」
「やっぱり……」
俺のその言葉に視線を落とした颯希の頬を掴んで無理矢理、視線を合わせる。
そうしてニンマリ笑って言葉を紡ぐ。
「でも、俺は俺の意思で漫研に入ったんだ。その選択に後悔はねぇし、入って良かったって思ってる。何だかんだ楽しいし、それに、」
「それに?」
「お前がいれば、お前と一緒だったら俺はなんだって楽しいんだよ!だからそんな不安そうな顔すんなよ」
「いひゃいよ、そうひゃん」
「わかったか」
「わかっひゃ、わかっひゃから、はなひて!」
段々言っていて気恥ずかしくなってきたので颯希の頬を掴む手につい、力が入ってしまい、颯希から抗議を受けたがそれをサラリと聞き流す。
「ほら、じゃあ学校行くぞ」
「うぅ〜。絶対頬赤くなってる」
「……悪かったって!」
「そうちゃんの馬鹿力―!!」
「あ、おい、颯希!」
そう言って俺を置いて急に走り出した颯希の背を追って俺も走れば、数メートル先で立ち止まった颯希ぐくるりとこちらを振り返り
「俺だって、そうちゃんが一緒だったら何だって楽しいんだからね!て言うか俺の方が絶対絶対ぜーったいそうちゃんと一緒に部活やれてる今が嬉しいんだから!!」
と言って再び走り出した。
そんな颯希の言葉に思わずその場に立ち尽くしたまま赤くなった顔を隠すように手で前髪をクシャりと握った。
「何に対して張り合ってんだよ」
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