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38.恋する幼馴染

 奏汰 side 「颯希くーん、写真撮ろう!」 「ほら一緒にとろとろ!!」 「何だか恥ずかしいな」 「いいじゃん、うちら何かより似合ってるって」 「うん、うん、すごく可愛いし」  そうやって繰り広げられる光景を朝から一体何度見たことか、内心ため息を吐きつつ「店員さーん。」と呼ばれ向かったテーブルの方へ近づいた次の瞬間、思わず顔が引きつってしまった。 「おー似合ってんじゃん」 「やっべ、松永お前それ洒落なんねーわ」 「爆笑してやろうと来てみたらこれだもんな」  ダァンッ 「お客様、ご注文をどうぞ」 「おいおいそこはご主人様じゃねーのかよー」 「ちっ」 「うわっ、舌打ちしたよこのメイド」 「態度悪いな、このメイド。おーい、向井~」 「はーい。って何だ、木村君、中田君に大杉君だ」 「なんだってなんだよ」 「あはは、ごめんごめん。って、そうちゃんがいるなら別に俺の事呼ばなくてもよくない?」 「松永の奴、態度悪くてさー」 「そーそーこっちは折角褒めてやってんのに」 「そりゃそうだ。そうちゃん朝からずっと機嫌悪いんだもん。仕方ないよ」 「そんな投げやりなこと言うなよ。て言うか松永もだけど向井も随分可愛らしい格好してんじゃねーか」 「えー何かその言い方親父くさーい」  そうやってクスクス笑う颯希に対し「いや、マジで可愛いって」何て言いながら俺を置いて目の前で盛り上がる颯希と客3人組。  現クラスメイトであり、中学のサッカー部のチームメイトだ。  颯希はサッカー部では無かったけれど、試合の応援やら母さんの代わりで部活に差し入れを持ってきたりなんてしていた事によってこいつらとも顔見知りだ。  加えて、高校で同じクラスになった事もあり、中学の頃は俺を介して話をする関係から個人的に話をするような仲になっていた。 「もー、いいからお前らとっとと注文しろ。そして出て行け」 「いやいや、だからお前それ客にする態度じゃねえって」 「容赦ねーなー、おい」 「松永の態度ひでーと思わねぇか、なぁ向井」 「あはは〜、ほら、そうちゃん!折角皆んな来てくれたんだしさそんな怖い顔しないの」  3馬鹿トリオからの文句に苦笑しながら颯希が俺の眉間のシワを指でトンっとつく。  その仕草に深くため息を吐きながら、「わぁったよ」と、小さく零した。 「本当、松永って向井の言葉には素直だよなー」 「うるせ」  そうしてやっと注文をし、この空間を堪能して3人は部室を後にした。 「たくっ、やっと帰ったか」 「そんなこと言って、そうちゃんちょっと嬉しそうだったよ」 「はぁ?!んなわけあるか!」 「えー、でもさ、来てくれて良かったじゃん。あの3人と話してる時、そうちゃんすっごく楽しそうな顔してるんだよ。俺ちょっと嫉妬しちゃうもん」 「ばっ、馬鹿な事言ってんじゃねーよ。そう言うお前だってニコニコ愛想振りまいて楽しそうにあいつらと話してたじゃねーか」 「だってそうちゃんの話ができるからね」  そう言って笑う颯希に何か返そうと口を開いた瞬間 「はい、そこいちゃいちゃしなーい」  なんて言いながらヒロ先輩がやってくるもんだから思わず全力で否定した。 「してません!!」 「あはは、裕先輩いちゃいちゃってなんですかー」 「ほらほら、3人とも無駄口叩いてないで働く働くー」  そう言ってきた深月先輩の声に急き立てられるように俺達は仕事に戻っていった。

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