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62.恋する幼馴染
奏汰 side
早いもので春が過ぎ、じっとりとした暑さの季節がやってきた。
後輩達とも何だかんだ良い関係を築けているんじゃないかと思う。
そうして今日も今日とて部活動……と言うか、部室でただ駄べるだけの活動を終わらせ、自宅に帰ろうとしたら颯希に思いっきり鞄を掴まれてぐえっ、だなんて変な声が出た。
「そーちゃん、どこ行くの?」
「どこって、帰るんだろ」
「もしかしてそーちゃん忘れちゃったの?今日からお母ちゃん達4人で旅行行くから晩ご飯は二人で食べる為に帰りは一緒にスーパー寄ろうって話してたのに!!」
「あー…そうだっけ?」
「そーだよ!もー本当にそーちゃんは忘れん坊だなー」
「わりぃわりぃ」
「絶対悪いなんて思ってないでしょー」
ぷんすかなんて擬音が高校生にもなって似合う男なんて颯希くらいなまんだよな……なんて思いながらスーパーの方へ方向転換をし、
「ほら、スーパー行くんだろ。置いてくぞ」
「ちょっ、待ってよ~」
と、言えば慌てたように後ろをついてくるからつい、笑ってしまう。
そんな様子を見てあぁ好きだなぁだなんて思いが浮かんで緩みそうになった頬をきゅっと引き締める。
高校生になってから同じ部活動に入って、中学の頃より一緒にいる時間が増えた事によって今まで抑え込んでいた気持ちが時々溢れ出しそうになる。
それもこれも最近目の前で毎日のように行われる愁からヒロ先輩への告白劇場のせいだと、心の中で悪態をつきながら今日も行われていたその行為を思い出す。
「裕先輩好きです!」
「うん、俺男だし、もっと他に良い人が愁にはいると思うよ」
「男とか女とか関係ないです!裕先輩が好きなんです!!」
「何で俺なんだろうなー他の男の人だったら全力で応援するのになー」
そう言って愁の告白を毎回跳ね除けるヒロ先輩に折れることなく毎日毎日告白できる愁は凄いなと思うと同時に俺には絶対無理だと言う現実を突きつけられているみたいで毎回気分が落ちる。
俺には今の颯希との関係を壊してまでその先の関係を望むなんて事出来ない。
多分颯希にとって俺は兄みたいなもんで、誰よりも近くにいるのに誰よりも遠いこの距離がやっぱり
「きちぃな……」
「何がきついの? 」
ぽつりと零したつもりだった声がどうやら颯希に聞こえたらしく、キョトンとした顔をしながら問いかけてくるそんな顔を可愛いなと思う俺はもう末期で
「お前が馬鹿すぎて」
「はー???そーちゃんの方が勉強出来ないくせに俺を馬鹿呼ばわりするとか生意気!せめて平均点取れるようになってから俺のこと馬鹿にしろよ!」
「はっ勉強出来るだけが賢いわけじゃねーんだよ、この鈍感ヤロー」
「はー、何それ、何それ!今日のそーちゃんいつにも増して俺に対する当たり強くない? 」
「気のせいじゃね」
「いーや、絶対そーだ!もーそーちゃん何か知らない!バーカバーカ!!」
そう言って走り出した颯希の背中に
「馬鹿はお前だばかさつき」
と呟いた俺の言葉は風に拾われることなく萎んで落ちた。
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