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68.恋する幼馴染
奏汰 side
そうしていつもの帰り道、二人並んで歩く。いつもと同じように他愛も無い話をしていれば途中で不意に会話が途切れてほんの少し、沈黙が流れる。
そんな沈黙の中先に口を開いたのは颯希だった。
「そうちゃん、さ、俺に隠し事してない?」
なんて聞いてきた。
その言葉にドキリとする。
まさかこの気持ちがバレたのか……
いやいやいや鈍感なこいつに限ってバレるはずない。
バレるはずない、だろ……
「んだよ急に」
内心の焦りを出さずごく、ごく普通に返答する。
すると隣を歩いていたはずの颯希が突然立ち止まって俯いた。
「どうした?」
と、思わず問いかけた俺に小さく息を吸って颯希がぽつり、と話し出す。
「……俺達さ生まれた時からずっと一緒にいて家族よりも近くにいるじゃん、だからお互い隠し事なんてありえないって、そうちゃんの嘘や隠し事なんてすぐに見抜けるって思ってた。だってそうちゃん嘘つくの下手だもんね」
「颯希?」
「俺が!誰よりそうちゃんの事理解してて、そうちゃんだって俺の事誰より理解してくれてるって思ってた!!思ってたのに……全部俺の思い込みだったんだ……」
「ちょ、なんの話してんだよ」
「……好きな人って誰?」
「は?」
「そうちゃんの好きな人って誰?そもそもいつから好きなの?何で好きになったの?俺の知ってる人?俺よりそうちゃんの近くにいるの?……俺よりもその子の事が大切なの?」
一瞬颯希が何を言っているのか理解出来なくて思考が停止した。
そんな俺に対してつらつらと颯希は俺に問いかけてくるその問いに
((((おまえだよ!!)))
なんて言えるはずもなく、いやむしろ何でどこからバレたのかそう頭の中がぐるぐるして考えが纏まらない。
喉はカラカラでやっと絞り出せた言葉は疑問だけだった
「おま、何でそれ……」
「はは、否定しないんだ。好きな人がいるってこと」
そう言って颯希は力無く笑う。
何でお前そんな泣きそうな顔してんだよ。
何で俺に好きな奴がいるかもしれないってだけでそんな、そんな辛そうなんだよ、なんで……
お前も俺のこと好きなのか
何て自分に都合の良い考えが浮かび上がって消える。
違う、こいつはただ寂しいだけだ。
こいつは俺の事兄弟みたいに思っているから、そんな俺に好きな奴がいるって突然知って混乱しているだけなんだ。
そうやって俺が黙って一人頭の中で葛藤をしていたら颯希がまた口を開く。
「何で何も言ってくれないの?何で黙ったままなの?何で、なんで、なんで!!」
「っ……」
そんな颯希にかける言葉が咄嗟に出てこず口を噤んでしまう。
「俺はそうちゃんの口から聞きたかったよ!好きな人がいるって!!何でも!そうちゃんの、奏汰の事は奏汰の口から聞きたいよ!!」
「一旦落ち着けって、」
「落ち着けって?俺は落ち着いてるよ、あぁ落ち着いてるさ。俺って……俺って一体奏汰にとって何?俺は奏汰の事大切な、一番大切な人幼馴染だって胸張って言えるよ、でも奏汰はそうじゃなかった……?」
「っんなわけっあるかよ!!俺だって、俺だってお前の事すんげー大切な幼馴染だってそう思ってるよ!じゃなきゃ、たかが男の幼馴染の為に武術なんて習ったりしねぇ、強くなんてなろうとしねぇよ!!」
「そうちゃん……」
あぁ、ダメだ。
もう無理だ。
抑えられねぇ……
こんな、俺が好きな奴いるってだけで取り乱すこいつが好きだ。どうしようも無く好きだ。
例えこいつの好きと俺の好きが違うかったとしても、それでも俺は目の前のこの、バカみたいに取り乱す幼馴染が、愛おしいんだ……
「颯希!聞け、俺は!」
「嫌だ!!やっぱ聞きたくない!!!」
「はぁぁぁ?お前が聞いたんだろうが好きな奴誰だって」
「無理、無理だよ無理、そうちゃんの口からそんなのやっぱり聞きたくない!やだよ、そうちゃんに俺より大切な人なんて出来て欲しくない!そうちゃんの1番は全部全部俺がいい!やだよ、やだよ……こわい、こわいよそーちゃん……そんなの、そんなのやだよぉぉ」
「高校生にもなってそんな泣くなよ……」
「ひ、ひどい、おれしっ、しんけんにいっ、てるのに、ぐすっ、」
「あー俺が悪かった?」
「な、なんでそーちゃんがあやまるの」
「お前が泣くからだろ。知ってんだろ、俺がお前の涙に弱いの」
「なんだよ……何だよそれ。俺が勝手にそーちゃんに詰め寄って勝手に取り乱して、勝手に泣き出しただけなのに……」
「おぉ、自覚はあったんだな」
「うぅぅ、」
「あぁーもう泣くなって」
そう言いながら乱暴に颯希の涙を拭ってやる「痛いよそうちゃん」なんて言う文句は全部無視してやった。
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