96 / 173
4.恋する後輩
愁也 side
どうやらヒロ先輩みたいに同性愛の物語が好きな人を腐男子と呼ぶらしい事は家に帰ってネットで調べて知った。
どんな理由にせよ俺の告白は玉砕して振られた。
それは覆しようのない事実だ。
けれど別に嫌われているわけでない。
だったらもう俺が取るべき行動は……そう!当たって、当たって、アタックするのみ!!
と言う単純思考のもと、俺は今日も今日とて
「ヒロ先輩好きです!付き合ってください!!」
「うん、無理!」
玉砕しまくるのです。
■□■
「ははは、愁は本当に裕先輩が好きなんだね~」
「さっちゃん先輩は笑ってないで何か良いアドバイス下さいよ~」
「えー何も思いつかないや」
「ちょ、なんすかそれ~」
ヒロ先輩への通算87回目の告白も玉砕した俺は部室の机に突っ伏していた。
そんな俺を見て笑う通称さっちゃん先輩は俺の1つ上で漫画研究部の先輩だ。
本名、向井颯希(むかい さつき)。
ほんわかした優し気な雰囲気と俺とは違って染めていない自然で綺麗な金髪、誰もが見惚れる整った顔立ち、校内にはファンクラブまであるイケメンで俺の自慢の先輩の一人だ。
そして俺はそんな先輩の秘密を知る数少ない人物であり、俺の恋路を応援してくれる心強い味方なのだ。
なんせ先輩は……
「は~。それにしても萌えるわー。まさか身近な所でこんな萌案件が転がってるとか、話聞いた時は俺今日死ぬんじゃないかなって思ったもん。愁のアタックに靡かないで振り続ける裕先輩流石だわ。これぞ先輩後輩モノの王道展開だよ。最初は全然興味なかったしバッサリ振っていたのに段々情が湧いてくるけれどそんなの表に出さずに変わらない態度で接し続ける。けれど確実にもう自分では気づかないうちに絆されてて最終的にはそう!二人は結ばれるんだよ!!物語では」
「ちょ!最後の一言は余計っす!現実でもそれを実現して見せます!!」
「あはは、その時は報告よろしく~」
そう、ヒロ先輩と同じく腐男子なのだから!
けれど先輩はこの事を周りに隠している。
何故か気になり尋ねてみたら
「だって、学園の王子様が腐男子だなんて女の子の夢を壊しちゃうだろ?」
っていい笑顔で言われた。
そして心強い味方と言うのはそれだけではない。
ガラッ
「あ?何だ。まだ颯希と愁也しかいねーのか」
「そうちゃーん!!」
「どわっ、だ~か~ら~急に抱きつくな!危ねぇだろうが!!」
「えへへ~、つい」
「お前がそんなんだから最近愁也が真似するって裕先輩に俺がぐちぐち文句言われてんだよ」
「え~。そんなの俺知らないよ~。勝手に真似する愁が悪い」
「開き直んなバカ」
「いたっ。暴力反対~!!」
「奏汰先輩、こんちゃっす!」
「おー。愁也、お前も颯希の真似しないで普通に挨拶しろよ、裕先輩にドヤされんの俺なんだから」
「うぃ~す!」
部室に現れたこの先輩、松永奏汰(まつなが そうた)。
黒髪でツリ目、ぱっと見はヤクザみたいで怖いけれど心根は優しくて困った人は放って置けない子供やお年寄り、小動物に甘くて昔のヤンキー漫画に出てきそうなそんな先輩はめちゃくちゃ強い。裕先輩も喧嘩は強いけれど奏汰先輩はそういう強さだけでなく運動センスがずば抜けて凄いのだ!
サッカーや野球といった球技から剣道、柔道などあらゆる武術に置いてこの学校、いやこの地区で奏汰先輩に敵う奴なんて同年代にはもういないと言っても過言ではないほどすごい人なのだ!!
俺の自慢の先輩の一人だ。
そして、さっちゃん先輩の幼馴染でな、なななんと!この二人は付き合っているのであーる!!
と言っても付き合い始めたのは俺が入部して暫く経った頃らしいけども、正直俺は初めて会った時からこの二人は付き合っていると思っていた。
それを同じ学年の昴に言ったら「だよね。衝撃だよね、俺もそう思ってた」と真顔で返された。
そう、さっちゃん先輩が俺の心強~い味方っと言うのは腐男子であり男同士で恋を成就させた大先輩だからだ!!
因みに奏汰先輩は俺がヒロ先輩の事を好きなのは知っているがさっちゃん先輩が腐男子なのは知らない。
その事について何で言わないんすか?と聞いたら
「だ、だって恥ずかしいし、そうちゃんに引かれたら生きてけないおれ……」
と、女子相手の時とは打って変わって、お顔を真っ赤や真っ青にしながら答えられた。
そんな先輩に奏汰先輩はそんな事で引きはしないだろうけどな~と思ったがそれを口には出さなかった。
ともだちにシェアしよう!