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11.恋する後輩
裕 side
メッセージに書かれていた場所は中学生のころ、俺や俺の仲間がよく集まっていた場所で、そこには俺を呼び出したやつだけでなくかつての仲間達がいた。
「で、今更何の用だよ」
呼び出した張本人である人物にそう、言葉を投げればそいつは俺を見て随分と嬉しそうに笑った。
■□■
俺の家は両親が2人揃って教師と言うこともあって、世間一般的に見ると厳しい家庭環境なんだろうな、という事は幼いころから何となく理解はしていた。
母さんは特別厳しいなんてことは無かったけれど、父さんは昭和のガンコ親父みたいな人で、俺や兄ちゃんも自分と同じ教師にさせようとそれはもう厳しく育てられた。
けれどずっと父さんに言われるままに生きていた兄ちゃんがある日突然小説家になりたいだなんて言って、高校卒業と同時に家を飛び出したのは俺がまだ小学生の頃だった。
それから兄ちゃんは家に寄り付くことは一切無かったけれどその代わりに一人暮らしを始めた小さなアパートに俺を招き入れてくれてそうして自分で書いた小説や、兄ちゃんが面白いと思った漫画やアニメを勧めてくれた。
父さんはあまりアニメや漫画に対して良い感情を持っていない人だったから与えられたことのないその娯楽に俺は初めて触れて、そうしてのめり込んでいった。
兄ちゃんの家に頻繁に行くだけでは飽き足らず、自分でももっと色んな作品を読んでみたいと思うようになって、父さんにバレないようにお小遣いでこっそり漫画を買い集めたりもするようになった。
そうして俺は1冊の漫画と出会った。
政治家の家に生まれた主人公が親に反発してヤクザになるなんて言うとんでもないストーリーであまり人気が出ず、打ち切りになり、単行本も2巻しか出ていなかったけれど、その主人公の気持ちに俺はその時酷く共感して何度も何度も読みかえした。
父親からのプレッシャー、強いられたレール
立場を放棄した兄の代わりに責任を負わされる事になってそこから逃げ出した主人公。
詰め込まれすぎた設定は上手く使いこなされていなくて、ストーリーはしっちゃかめっちゃかだったけれども俺はその主人公に感情移入して惹きつけられたんだ。
兄ちゃんが家を飛び出してから父さんの俺へのお前は兄のようにはなるなよ。なんて言外のプレッシャーみたいなものが日に日に強くなっていて、それに対する反抗心みたいなものがむくむくと俺の中に蓄積されていて、そんな中その漫画と出会ってしまったことによってそう、中学生になって数ヵ月が経った頃、俺はそれはもう盛大にグレた。
ほら、オタクって影響受けやすいだろ?
何かその時はもう父親への反発心とその漫画の主人公への憧れみたいな気持ちがないまぜになっていてそうして爆発したんだ。
今考えると黒歴史っちゃ黒歴史みたいなもだな……
髪を金髪に染めたり、制服を着崩したりなんてしちゃったりしてさ
オタクはまず形から入るだよね。
そんで手あたり次第、道場破りよろしく喧嘩の強い奴に喧嘩を売っての繰り返し。
俺ってば兄ちゃんと違って喧嘩のセンスが結構あったみたいで、不良グループを片っ端から潰していってたら2年生になる頃には俺の周りには結構な不良が集まってきていて所謂グループなんてもんができあがってたってわけ。
そうやって仲間ができてからはただ喧嘩をするだけじゃなくて夜遊びをしたり、他校の生徒と喧嘩したりして警察に追いかけられたりもしたわけで、その時もう既に警察官だった健斗に「お前あんまり龍に心配かけんなよ、裕がグレたーなんて泣きついてきて迷惑してんだ。」なんてため息交じりに補導されたりした。
まぁそんな事言われてはい、そうですねなんて更生する気はこれっぽっちも起きなくて、むしろ兄ちゃんが父さんと喧嘩して家を飛び出したせいでこっちに飛び火が来たんだから、それを受けてこうして俺が不良になったのは兄ちゃんのせいってのも少しはあるんだからな、くらいに思っていた。
そんな中学生活を俺は送っていたんだ。
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