裕　side 　何であいついるんだよ！ 　そんな俺の疑問に答えてくれる奴はこの場にはいなくて戸惑っていれば再び男が語りだす。 　どうやら俺と愁がよく一緒にいるのを街で見かけたこいつらが勝手に愁のことを舎弟だなんて勘違いしているようで、学校の奴らのせいで麻痺していたが普通に見たら愁は俺の舎弟にみえるらしい……いやいや、普通に見てもそうは思わないだろ、こいつらがバカなだけだろ、あぁくそ頭の中が大混乱だわ。 　そうやって呆けていれば「った」と、小さく呻く愁の声が聞こえてその瞬間、頭の中で何かがキレた。 　それからはまぁ久しぶりに暴れて、そんで愁のおかげであいつの真意も聞けて俺もちょっと悪かったなってほんの少し反省はしたものの何か言葉をかけるでもなく、ただふらりと立ち上がって出ていく後姿を見送った。 　そうやって歩くいつもの帰り道、ふと会話が途切れたタイミングで愁が 「ヒロ先輩、何で不良やめたんすか？」 　何て聞いてきた。 　そんな愁の言葉に 「あー、だから言ったろ、他のことに忙しくなったって」 　だなんて曖昧に答えれば、納得していないようでしつこく聞いてくる愁に内心どうすっかな、なんて思いながらまぁ表向きの理由だけでも答えてやれば良いかと思い 「コミケ出るようになって原稿で修羅場潜るようになったから」 　なんて答えれば目を丸くした後呆れた顔で 「……それあの人に言わなくて正解ですね」 　何て言ってきたので 「だろ？」 　と、キメ顔で言えば急に笑い出してそうして俺の顔を真っ直ぐ見てくる愁と目が合う。 　その瞬間、トクンと心臓が跳ねた。 「ヒロ先輩ありがとうございました。結果的に助けてもらう？事になって。久々の喧嘩するヒロ先輩の姿かっこよかったっす！惚れ直しました。後、さっきのあの大切な奴っての俺自惚れちゃってもいいっすか？」 「バーカ、あれは大切な後輩って意味だ。勝手に勘違いすんなよ、恥ずかしい奴」 　跳ねた心臓の音を誤魔化すようにそっぽを向いた俺に再び愁が笑うもんだから軽口を叩いてやる。 「また、笑ってる。そもそもお前俺を好きだってんなら俺より……いや、せめて俺と同じくらいには強くなりやがれ」 「え～。喧嘩とかまじ無理っす」 「もやし」 　そんな愁とのやり取りに今度は俺が笑ってしまう。 　そんな俺に 「ヒロ先輩、好きです」 　なんて、今ではもうすっかり聞き慣れたその言葉を愁の奴が口にするもんだから 「お前がもっと頼りになる奴になったらな」 　そう返してやる。 「でも何かあっても裕先輩が助けてくれるんでしょ？」 　そう言ってきた愁に 「調子にのんなばーか」 　と言ったもののそれもそうだな、なんて思ってしまった自分がいて俺は俺が思っているよりもこいつに絆されているらしい。