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019 僕とつき合ってほしい:R
胸ぐらを掴まれて、殴られてもよかった。
わざと挑発したから。
屈辱を味わわされた男に怒りがあるなら、発散したほうがいいじゃん?
普段あんまり出さない紫道 の負の感情、見たいってのもあったし。
それぶつけられたら、られたで……少しは気許してくれてるんだなーって思えるし。
でも。
紫道は僕の肩に手を置いてうなだれただけ。
「言うな……情けねぇ身体だってのは、十分思い知ってる」
苦々しい紫道の声。
「だから、遊びでやるとか……したくねぇんだ」
「情けなくなんかないよ。感度がよくて、快感に弱いってことじゃん。いいカラダ……楽しみ」
思いっきり眉を寄せて僕を見つめたまま、紫道が僕から手を離す。
「玲史……聞いてたか。俺は……」
「身体だけの関係は嫌なんでしょ?」
「ああ、そうだ」
「ねぇ。恋愛経験ないなら、そのあとは誰ともやってないの?」
「……女と一度、だけだ」
言いにくそうに答える紫道。
好きじゃなくてもセックスしたんだ?
なんて、ツッコんだりしない。
「あ、バイだって言ってたもんね」
「やれはしたが……また抱きたいとは思わなかった」
「男に抱かれたい?」
紫道の瞳が揺れる。
「どう……だろうな」
「じゃあ、僕から提案」
自分の横、ベッドの縁を叩いた。
「座って、ここ。何もしないから絶対」
ためらいがちに紫道が隣に腰を下ろすのを待って。
「僕ね、きみのこと好きだよ」
まずは好意を伝えて。
「友達として、だろ」
一瞬。身体を強張らせてから、紫道が言う。
「それなら、俺もだ」
次は望みを。
「うん。でね、きみとセックスしたいって思ってる」
「……それは、性欲だろ。だけじゃないにしても」
「うん。でもね、紫道だけって言ったじゃん。1年もそう思い続けてるのって」
片足をベッドに乗せて、身体ごと横向きになる。
「だから、あるでしょ? きみに恋してる可能性」
策じゃなく、マジ。
過去の話聞いて。今こうして向き合って、思った。
「そ……れは……」
「わかんないよ。でも、確かめたいの。だから……」
少なからず動揺してるっぽい紫道に微笑んで。
「僕とつき合ってほしい」
提案、ていうか。
恋する気持ちとかじゃないけど。これも告るの一種だよね。
「れい……」
「もし。紫道にその気が1パーセントもないなら今、はっきりノーって断って。そしたら、もう誘わない。もちろん、友達なのは変わらない」
畳みかけるようにそこまで言って、紫道の言葉を待つ。
これでダメならダメってこと。
紫道がほしい。すごく。
いますぐここで押し倒したいくらい……だけど。
ムリヤリ奪う真似はナシ。
やりたいオンリーの辛抱たまらずは、言うに及ばず。たとえものすごく好きでも、愛ってのがあっても。
強制性交する人間は最低のクソだもん。
「俺は、たぶん……お前に……」
たどたどしく、紫道が口を開く。
「お前と……やるのは、嫌じゃない」
「ほんと? 嬉しいな」
「けど……」
紫道が続ける。
「いきなりつき合うってのは、待て」
「何で? 気持ちがないから?」
「いや……」
「どうしても恋愛感情にならなかったら、即別れればいいでしょ」
「……お前の『つき合う』は、セックス込みだろ」
「ほかに何するの?」
色黒の顔を赤くした紫道が、大きく息をつく。
「さっきも言ったが、考えさせてくれ。もう少し……」
「今。決めて」
紫道の言葉を遮った。
「じゃないと、踏ん切りつかないでしょ。ていうか、今ノーなら1週間後もノーじゃない?」
沈黙は長くなく。
「お前には大したことじゃないんだろうが、俺にとっちゃ今オーケーするのは……簡単じゃない」
そう言った紫道の顔見て確信する。
ノーじゃない。
まだ、オーケーに振り切れてないだけ。
「ほしいのは時間? きっかけ?」
「……両方だ。来週から学祭の準備で忙しいだろ」
それじゃ、考えるヒマもないんじゃ……?
「選挙もある。立候補がいなけりゃ俺かお前か將悟、最悪2人出なきゃならないが……俺は風紀委員に立候補するかもしれない」
選挙……風紀……。
「僕も立候補する!」
「は!?」
「風紀に」
困惑気味の紫道を見つめる僕の瞳、らんらんと輝いてるはず。
「選挙じゃなくて現委員が決めるんだよね?」
「ああ、そうだ……」
「立候補して風紀委員になれたら、僕とつき合って。これでどう? 時間ときっかけクリア」
「俺は……」
紫道が開いた口を閉じる。
「なれなかったら。その時、きみが決めていいよ」
「……俺もなれたら?」
「んー……つき合っても無理強いはなし。きみがいいって言うことしかしない、とか?」
思案顔の紫道が息を吐く。
「俺はまだ、覚悟しちゃいない。まだ……怖いんだ」
「何が?」
「……身体だけ落ちちまうのが、だ」
「僕を恋人として見れる確率って、どれくらいある?」
「……五分五分だな」
「それだけあれば十分」
「玲史」
笑みを浮かべる僕に、真剣な眼差しを向ける紫道。
「お前、本当に本気なんだな?」
今さら。
「うん。嘘っぽい?」
「いや……遊び相手にゃ困ってなさそうなお前が、わざわざつき合うことにしてまで俺を……ってのが、不思議でよ」
「きみはトクベツなんだってば」
腑に落ちない様子の紫道をジッと見つめる。
「僕の本気を見たいの?」
「目で見えないもんだろ」
「まぁね……あ」
コレ、引かれるリスクあるけど……やっちゃおうかな?
紫道前にして、思いのほか欲情ハイレベルだし。
懇願させるプレイ中でも滅多にしないけど……リアクション、見てみたいし。
「オナニーは必要な処理って感じで、僕はあんまり熱くならないんだけどさ」
「は……!?」
「ほら、僕の場合……実際に目の前で、もだえてほしがる男の姿と声が快感だから。自分で抜くのはイマイチなの」
唐突な話題にとまどってるのか、半開きの口で目を瞬く紫道にかまわず。
「落とした男とかセフレとか。今から犯せるって場面だと気分上がって勃つけど、その場だけ。ひとりの時の興奮剤にはならないんだよね」
ここから本題。
「でも、きみは別」
紫道と目を合わせたまま、ズボンのベルトに手をかけた。
「想像だけでその気になるよ……見て」
ベルト外してファスナー下ろして、半分勃ったペニスを取り出した。
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