85 / 167

085 おかしいだろ!:S

 木谷からのメッセージを見て、確かに思った。  助けになるなら、なりたい。  玲史が木谷のヘルプに応えたいってのも、理解できる。  だから。  都合がよければ会って話したいってのに、オーケーし。水分補給し。シャワーを浴び。玲史が手早く用意した、分厚いハムを挟んだバケットサンドを食べ。昨夜の余韻が残る玲史の部屋を後にして、学園のある駅前に出向き。  木谷の話を聞いた。  それによると。  昨日、津田とキスした。  襲わなかったし、襲われなかった。  セックスに関しては、少し考えさせてほしいと言われた……けど。  今日、木谷の家に津田が泊まりにくる。  セックスしにくる。  木谷を、抱きにくる……らしい。  そして、あのメッセージ。 『ケツにちんぽ挿れるコツ、教えてください!』  玲史へのヘルプ。  コツというか、やり方を教えてほしい……が、正しいようだ。  中学の頃から片思いしてるにもかかわらず、木谷は男同士のセックスに疎かった。ゲイビを見たことはなく、情報源はマンガだけ。リアルな部分がわからない。  津田とうまくいったそのあとまでは、しっかり考えてなかったらしく。 「昨夜、自分でやろうとしたんだけど……出来なくて。指が入らない。ちんぽなんか無理でしょ!? みんな、どうやって広げてんですか!?」  まだ日が暮れてない駅前広場のベンチ。幸い、話の内容まで聞こえる範囲に人はいないが……音量を気にしない声で訴える木谷に。 「ちょっとずつ解せば入るの。ローション使った?」  答える玲史は楽しそうで。 「使ったけど、穴閉じてるから垂れるだけだし。力で指ぶっ刺そうとしたら、痛いし」 「アナルの襞に指で塗って、押せば開くの。絶対広がるに決まってるじゃん。出すとこなんだから」 「俺のは、外からは開かない穴っぽい」 「開くってば」 「……コツを教えてほしいです。とにかく、本番であいつのちんぽが入るように」 「指が入らなきゃ、その先ないでしょ」  同意を得るように俺を見る玲史に、僅かに首を振り……目で伝える。  俺は傍観者に徹する。  話を振るのはカンベンしてくれ。  俺にアドバイスなんてもんは出来ないからな。  経験値が低いんだからな。  エロトークは苦手だからな。  聞いてるだけで、恥ずかしいんだからな!  了解してくれたのか。微笑んで、木谷へと視線を戻す玲史。 「指より太いちんぽ、挿れたい?」 「そりゃ、挿れたいですよ。あいつがその気になってるなら、やりたい」 「だよね」  2人の会話が再開。 「風紀の面接の時、高畑さんに言われるまで……あいつとセックスするとか、考えてなかったけど。考えたら、ヤバい。妄想しまくり」 「それ、抱かれるほう?」 「両方した。どっちもヤバい」 「きみを抱きたいって、津田くんが言ったの?」 「あーそれ。あいつに『俺を抱きたいのか?』って聞かれて。お前とやれるならどっちでもいいって言ったら、考えさせてくれ……って」 「で、考えた結果?」 「『挿れられるのは怖いから、俺が挿れる』っていうから。じゃあ、そうしようってことで」 「きみは怖くないの?」 「ないです。和橙(かずと)が相手なら」 「津田くん、和橙っていうんだっけ。」 「はい。それより、教えてください! 解し方! あいつ、習い事行ってて……7時に来るから、それまでに!」  今は5時前だが、7時……から、やるのか。元気だな。 「川北さん」  木谷が俺に顔を向ける。 「デート中に、本当すみません。時間取らせちゃって……」 「かまわない。オーケーしたのはこっちだ」  2人の会話に積極的に加わりはしないが、恐縮されることもない。  ほかに予定もなかったし。  玲史が乗り気だったし。  まだ、あまり助けになってないが……。 「問題ないよ。教えるって言ったの、僕だし。でも……」  玲史も頷き、続ける。 「挿れる以前に、解せないって言われちゃうと……」 「高畑さん。川北さん」  木谷が、真剣な顔で。 「実演、してください! お願いします!」  とんでもないことを頼んでくる。 「俺んち、近くなんで。うちで、お二人にやって見せてくれれば……」  ノーだ!!!  頭と心で叫んだ拒否を口に出す前に。 「見せるのはいいけど、解したら挿れたくなっちゃうからなぁ」  玲史が勝手なことをほざく。 「挿れたら、きみの家で何時間かやることになるけど。いいの?」 「玲史! ダメだ!」  断固拒否せねば! 「いいわけねぇだろ……」 「別にいいですよ。俺たち、ほかの部屋でやります。うち、今夜誰もいないんで。あ! そしたら、セックスもレクチャーしてもらえたり」  その返答に。 「木谷」  落ち着くために、深呼吸して。 「そっちじゃねぇ。見せていいっつーのがダメだ。見せてくれ、なんて……何考えてんだ」  ハッキリ、ノーだ。 「……すみません」  しゅんとする木谷。 「翔太は必死なんでしょ。ずっと好きだった和橙くんと初セックス。説明聞いてわかんなくても見ればわかるってこと、いっぱいあるじゃん」  かばう玲史の笑顔に、溜息をついた。  エロ方面での常識みたいなもん、コイツにはないんだった。木谷にはあると信じたいが……。 「ですよね! 俺、どうしても成功させたくて」 「じゃあさ、僕が解してあげよっか? きみの」 「玲史、そりゃ……」  マジで何言い出すん……。 「え! いいんですか? ぜひ!」  マジで……。  おかしいだろ! 木谷も! 「紫道(しのみち)? どうしたの?」  ノーって、言うべきか。言っていいのか。 「きみが見せるんじゃないから、いいでしょ? アナル拡張教えるだけだよ。翔太の見るのもダメ?」 「い……や……」 「あ。寮って門限ある? 僕は翔太の家行くけど、先に帰る?」  続く玲史の問い、イエスかノーとかじゃなく……違うだろ。  わからねぇ……何がよくて何がダメなのか……。 「川北さんも来てください」  俺を見つめる木谷の瞳は切実で。 「もちろん、高畑さんを信じてます。俺のことも信じていいです。けど、2人きりだと心苦しいっていうか……川北さんにも、和橙にも」  ああ……もう。 「わかった」  よくはないが、ひとりで降りれないだろコレは。  行くしかない……よな。

ともだちにシェアしよう!