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086 どうすりゃいい!?:S

 いったい。どうして、こんな状況になったのか。  今。ほぼ目の前、で。  目を伏せるかつぶるかしなけりゃ、見えちまうところで。  耳を塞がなけりゃ、聞こえちまうところで。  見えない聞こえないようにしても、そういう気配を感じちまうところで。  エロいコトしてるヤツらがいる。  いや。そうじゃねぇ。  ここにいるのがおかしいのは、俺のほうだ。俺と玲史がここにいるのが、おかしいこと……のはず。  おかしいって思う俺は、おかしくねぇ……はず。  たとえ。頼まれてのことだとしても、だ。  木谷からのヘルプで学園の最寄り駅に出向き、話を聞いた結果。玲史が木谷に教えることになった……アナルの解し方を。実際にやってあげて、だ。  俺もその場にいてほしいと木谷に言われ。自分でもそこにいなけりゃと思い、3人で木谷の家に向かった。  玲史に支えてもらうも、腰の痛みでゆっくりとしか歩けず。1キロないくらいの距離を20分以上かかって着いたそこに、先客がいた。  木谷の恋人、津田和橙(かずと)だ。  予定より早く来たらしい津田を見て、ホッとした。  俺と玲史は、お役御免だろうと。  津田が来る前に木谷が玲史にしてほしかったエロ指南は、もう不要だろうと。  なのに。  俺たちがここに来た理由を木谷に聞いた津田の反応は、予想外だった。 『それ、俺に教えてください。ぜひ!』  マジか。  木谷以上に乗り気な津田に。玲史は、もちろんオーケーだ。  一緒に来ちゃいるが、俺には理解が難しい。俺が木谷だったら、そんな頼みはしない。津田の立場でもノーだ。  そんな、プライベートなこと……ところ……。  恋人以外に見せるのも、恋人のをほかのヤツに見られるのも嫌だ。  そう思うのが一般的じゃないのか。  堅苦しく考えてるのか、俺が。  経験とサンプルが乏しくて、わからない。  エロに関してはもう……普通や常識がわからなくなってきた。  玲史と木谷と津田を止める理由がなく。今さら離脱するわけにもいかず。やる気満々の3人について、木谷の部屋に上がり。  玲史がレクチャーを始めた。  驚くほどためらいなく服を抜いだ木谷が、ベッドに横になって脚を開き。その間に津田。その横に玲史。その横、木谷たちに背を向けてベッドに腰掛ける俺。  見守る気はある。  玲史が無茶しないか。  木谷に無理させないか。  津田が無茶……はしなそうだ。  とにかく。  役に立つ場面はないだろうが、ここにいる……つっても。     とてもじゃないが、それをガン見するつもりはない。  邪魔はしないように、ただいるだけだ。  そう思って、そのはずだった……のに。  マジで。何でこんな状況になっちまったんだ。  人がエロいことしてる空間は、思ったより刺激が強い。空気がエロい。  逆側向いて見ないようにしてるが、さすがに耳は塞げない。  だから、聞こえる。  会話と。ローションの水音。息づかい。 「痛ッ……ちょ、待って……」 「大丈夫だから、力抜いて。和橙くんさ、気にしないで入れちゃって。ズブっとね」 「でも、痛がってるし……初めてだし……」 「キツいのは最初だけ。指1本くらい余裕なの。すぐ気持ちよくなって、もっとほしいって言い出すから」 「だといい、けど……」 「大丈夫。勃ってるでしょ?」 「これ、は……興奮してるから。痛いと萎える……かも」 「大丈夫だってば」 「つッ! あ……」 「ほら、入った。ちょっとずつ動かして。どんどん広げて」 「中……こんななんだ……」 「プクッと硬いとこあったら、突っついてみて。そこ、イイトコロ」 「ッん、あッう……それ、なんか……へんッは……ッやめ、あ……ッ!」 「見つけた? 前立腺。ちんぽもビチョビチョでいい感じ。あ、触っちゃダメだからね。自分でイクの禁止。もう1本入る? ローション足して、そう」 「翔太……ここ、気持ちいいのか?」 「いいッけど……ちんこ、ビリビリする……ッこわ……手、掴ませて……」 「俺は今、手が離せないから……」 「紫道(しのみち)が手空いてるよ。和橙くんが嫌じゃないなら」 「かまいません……川北さん、お願い出来ますか?」  何でそうなるんだ!?  断れず。  木谷に手を差し出し。手首らへんを掴ませ、一度目を合わせて頷いてみせたが……そのあとは、木谷の顔を見てられなかった。  見れないだろ。  アナルに指を突っ込まれて眉を寄せるエロい顔、見てたらヤバい。  ただでさえ。  勃っちまってんのに!  このエロい空間のせいで。  何もしてないってのに。  昨日あんだけ出してんのに。  腰も痛むってのに。  何もされてないってのに。  収まらねぇ! 「ッあ、も……なんかツラい、イキた……いッ」 「どうする? 和橙くん。イカせていいなら、イイトコ強めに擦ってあげて」 「俺のほうも、もう……けっこうキツいんで、こっち挿れたい……です。翔太がイッても、続き出来ますか?」 「うん。アナルはもう少し、指3本入るまで解せばオッケー」 「あと1本……広げるから、痛かったら言えよ」 「んッ平気……早く、はぁッあッちんこ……」 「触るな……中でイカせたい」 「じゃ、紫道。押さえて」  は!? 「いや、それは……」  マズいだろ!?  木谷が、空いてる手を俺へ。 「川北さん、手……貸してくださ、い」  切羽詰まったような声で言われて。身体をひねり、掴まれてないほうの手を伸ばした……のを握られた。 「すみません、このままで……ッう、あ! いッあ、やッ……!」  木谷の両手に力がこもる。 「ん……ふ、あッ……はぁ、はっうッ……んんッ!」  息も、より浅く。  声も空気も、よりエロく。 「こうすると、イイのか……翔太、気持ちいいうちに3本め入れるから」 「あッかず、と……くッうう、あ……ッ!」  人の、快感に喘ぐ声。生で聞くのヤバい。破壊力が。ダメだ。  俺と玲史……ここにいちゃマズくないか?  マジでおかしい、だろ……木谷と津田の、2人の……なのに。  息が上がる。体温が上がる。  物理的な刺激はねぇのに、ちんぽが……ナカ、が……。  うッ!?  股間に、物理的な刺激。  木谷に向けてた視線を戻して見ると、玲史の手が……掴んでる。服の上から、俺のちんぽを。勃ってるちんぽ、を。掴んで、指先で撫でてる。デカくなった硬いもんを、確かめるように。  声を出さずに済んだのは幸いだ。木谷たちの邪魔になる。  やめろって言葉も飲み込んだ。木谷たちに勘違いさせちまう。  玲史の手を止められない。俺の両手はふさがってる。  どうすりゃいい!?  布越しに触られるだけでも厳しいってのに。  止めも避けれもしないうちに。玲史が素早く俺の前を開け、パンツの中に指を滑り込ませた。  直に触られ、増してく快感に耐えながら。すげー楽しそうな笑みを浮かべる玲史を睨みつける。 「ガマンしないでイッていいよ」  木谷への言葉だが、玲史の目は俺を見てる。  今。ここで。イケるわけねぇだろ! 「ね? 和橙くん」 「はい。指3本、入った……」  津田は木谷のことでいっぱい。 「ッあ、くッ……イキたい、さっきのとこ……うッんッ……!」  木谷もいっぱいいっぱい。  もし。  耐えられずにイッちまっても、2人には気づかれない。角度的に、見られてない。静かに出して、顔に出さなけりゃ……いや。  ダメだ。  バレたらどうする。  バレなくてもダメだ。  この状況で何で俺がイケるんだ。  玲史のおアソビだ。  流されるな! 「高畑さん……もう、挿れて大丈夫ですよね?」  津田の声で、玲史の手が止まる。  助かった……! 「うん。これだけ開いてれば、規格外サイズじゃなきゃオッケー」 「あ……和橙、やめんな……早く……ッ」  木谷の気持ちはわかり過ぎる……が、俺のほうは時間切れでよかった……。 「すぐイケるよ」  玲史が言う。俺を見て。 「ッつ……!」  カウパーでヌメるちんぽの先に、玲史の指が食い込んだ。

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