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137 ほら、ボロボロじゃん?:R

 あれ……?  どうしたっけ?  博己(ひろき)が坂口と通話、してコレ見てて……紫道(しのみち)もきっと見て、て……きっとここに来る、って思って。せめて最中じゃないように、少なくとも……この男、友井にやられるのは終わりにしないと……って。飛んじゃえば、たぶん終わるって……思って。気抜けば飛べるくらい、連続でイカされてたし……友井はタフで、本気で攻めてたけど……楽しんでるふうじゃなかったし……。  飛んじまえって言った、よね……。 『早く、もう……終わってくれ!』  て、言った……はず。  で……そのあと。  紫道の名前、呼ばないで飛べた……よね?  意識がちゃんとしてる時に、清崇(きよたか)を呼んだ。  助けを求めて。惨めったらしく情けなく。悲愴感アリアリで。  大げさに喘いだし。ナキゴトチックに叫んだし。  ボロボロな感じで!  だから。  そろそろ満足してくれないかなぁ……乱交パーティーにしては地味だけど。時間も短いけど。ひとりあたりの回数も多くないけど。痛めつけるってわりには、クズになりきれないソフトなプレイだったけど。  もういいじゃん?  気済んでよ。  終わりにしたいんでしょ?  なのに。  腕のとこ縛ってたヒモは解かれるも。ナカにまだある、ペニスの感触。  ビクビク脈打ってるのはこっちかあっちか……あーまだイカされてるのかイッてるのか……飛んでる間も突いてたんだ、よくやるなぁ……意識ないとこ犯しても、楽しくないのに……。  目を開けた。 「戻ったのか」  友井の声。  開けた目に映る、荒く息をつく友井の顔……少しはスッキリして、る……? 「悪いが、もう抜くぞ」  え、全然いいんだけど……イッたんでしょ、イッてくれてよかった……。 「ッう……! ん、あッ……」  アナルの中を埋めてた質量が消えた。 「タフだな」 「ん……はぁは……ッ」 「ちょうどいい。終わりにしたいなら、泣き叫べ」  え? 「博己が清崇をやる……止めろ」 「え……!?」 「宮内ってヤツが、清崇をレイプすれば博己が傷ついて壊れると言った」  幸汰(こうた)が……あ……坂口の電話で……。  上体を起こし、清崇を見る。  仰向けの清崇に博己が、頭のほうからキスして……脚の間に神野……あれ? 挿れてない? スマホ、取って……切った? まだ、そんなに時間経ってない……。 「俺は博己を止められない。リュウさんも……」 「何で……?」 「あいつがやりたいなら、やらせるしかねぇだろ!? お前らをボロボロにしても、あいつの気が済まなけりゃ……終われねぇ」 「……きみの気は済んだ?」  怯えたふうを装って、友井を見つめる。  コレを終わらせるチャンス。  快感が色濃く居座ってて身体がまだ疼いてるけど、ほしいのはここにいる男じゃない。ナカで得る快楽じゃない。犯されても満たない。  早く早く……。  紫道がほしい! 「もう十分、ボロボロだよ……」  開いたままだった脚を閉じる。 「いッ……」  演技じゃなく痛い。  長時間のセックスは平気だけど。タチだから。普段はこんなに脚開いてやらないし。アナルも使わないし。抱かれるの楽しくないし。 「覚悟、してたより……ツラい。イヤだ……もう、やめて……」 「博己に頼め」  僕から目を逸らし、友井が清崇のほうへ。 「つッ……ッ!」  後を追おうと上げた腰が痛い……けど。  肘と膝でなんとか動く。 「やめて、くれ……博己」 「やめない。きみを抱くよ」 「ダメだ……やったら、お前が……」 「俺は大丈夫。傷つかないし狂わないし。清崇を好きな気持ちもこれでなくなるから、失くすモノもない」 「博己……」  清崇と博己の会話に、友井も神野も口を挟まない。 「気持ちよくしてあげる。これで最後だから、抱かせてよ……」  ダルい身体を引きずって。やっと手の届くところに来た僕に、博己が微笑む。 「玲史の前で」 「イヤだ、ひろ……」 「やめて!」  掠れた声で叫び。伸ばした手を掴まれ、押さえ込まれた。 「よく見とけ」  神野だ。 「放して……! いいって言ってない! 博己に、清崇はやらせない!」  適度に力を入れてもがくも、神野の拘束は外れず。  すぐ目の前で、博己が清崇の脚を割るのを見て。 「お願い……やめて!」  懇願するも。 「挿れるよ」  もちろん、ムダ。 「やめろ……!」 「や、あッう……あアアッ……!」  すでにドロドロの清崇のアナルに、博己がペニスを突っ込んだ。 「んっアツくて……すごく、イイ……」 「ッあ、ひろ……き、やめ……ぅあッア……ッ!」 「清崇……!」  僕の声、聞こえてるかな。  理性は保ってるはず。  コレで最後なら、演じ切らなきゃ。  僕のは全てパフォーマンス。  誰に犯されたって別に平気。ムカつくけど。  清崇が犯されても平気。清崇が平気なら……平気だから。  最初に言った通り。お互い泣いても叫んでも、それは演技。真に受けない。怯まない。恋人のフリをやめちゃダメ。  本当の恋人を守るため。  自分の貞操は放棄した。  自分より大切なモノがある、なんて……思ってもみなかったけど。あったんだもん。  自分より大切なモノがあって。そのために出来ることがあって。なら、ソレをするのは苦じゃないでしょ。身体に大したダメージを負うわけじゃなし。精神に深いダメージを負うわけじゃなし。レイプされるくらい何でもない。  大切なモノを傷つけずに済むなら大丈夫。  大切なモノが無事なら大丈夫。  大切なモノは失くさないから大丈夫。  清崇も同じだよね?  自分が博己を抱くのはノーで。博己に抱かれるのをオッケーするのもノー。  でも。  意に反してやられるのは不可抗力。罪悪感はナシ。これで博己が傷ついても責はナシ……まぁ、傷つかないって自分で言ったし。最後だって言ったし。  あとちょっとで終わるから。  清崇も大丈夫……。 「れ、いじッ……!」  博己に攻められながら、清崇が僕を呼ぶ。 「ひッあ、イクッ! れいッじ、アアアッッ……ッ!」 「今、抱いてるのは……俺、だよッ……俺の名前、呼んでよ」  腰を振り続ける博己に言われても。 「も……やッ、れいじッぁあッイッて……るッあアアッ!」  清崇は僕を呼ぶ。 「きよた、かッ……清崇……ッ」  僕も清崇を呼ぶ。  恋人を犯され助けられない、惨めな恋人同士……満足じゃない? 満足でしょ?  ほら、ボロボロじゃん? 「俺を呼んでくれないんだ……その口、塞いであげる」  博己が清崇の開きっぱの唇に舌を差し込んだ。  けど。清崇はキスを返さない。快感に反応して舌を絡めない。快楽に溺れてない。 「はッあ……れいッ……れいじ……!」  僕を呼んでも、幸汰の名前は口にしない清崇……大丈夫だ。 「わかった……もう、いいよ……でも、ナカにいるのは俺だ。俺のでイッてるんだから……ほかの名前、呼ぶな……」  博己が清崇の顔を撫でる。 「理玖(りく)……一緒にやって」  無言で、友井が清崇の頭上に移動して。ペニスを取り出して、清崇の口に押し込んだ。 「清崇! やめ……」 「龍介も。やってないんだから、出したいだろ……玲史くんを黙らせてくれる?」  あー……。  すでに後ろから僕を羽交い締めにしてる神野に、そのまま犯されるのかと思ったけど。  掴まれてた腕を放され、バランスを崩して肘をつき。上げた視界に神野の股間。 「口を開けろ」  今さら抵抗する意味はなくても。喜んでしゃぶるわけもない。 「もう、やめて……」  さすがに涙は出せないけど、出来るだけの苦痛の表情で声を震わせる。 「お願い……」 「これで終わりだ」  神野の瞳にも苦痛の色。  コレで終わり。  やっと終わる。  ゆっくりと、口を開いた。

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