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138 やっと……終わる:R
フェラはあんまり楽しくない。
しゃぶる側が主導だから、されて気持ちよくても物足りないし。するのも攻め足りない。するよりされるより、ナカをぺニスで攻めるのが一番。
イラマは喉を突く側が主導で、加虐的な気分の時にたまにしたくなるけど……されるのはイヤ。友井にされてマジ苦しかったし、苦しいだけだし。苦しいの嫌いだし。
だから。
嫌々くわえた神野のぺニスを積極的にしゃぶった。
フェラで足りるように。十分気持ちよくなるように。イラマしたくならないように。
早くイクように。
早く終わるように。
僕のテクが神野の好みにバッチリ合ったのか。まだ一回もやってない出してないからか。性欲旺盛か早漏気味かイキたさマックスだったのか。
早く終えたいのか。
半勃ちだったぺニスはすぐにバキバキになり、射精まで長くはかからなそうで。僕の頭を押さえたり口内を犯す勢いで突いてきたりせず、僕にフェラされるがままで。乱暴なことは一切しないのが、意外で。
神野を見上げた。
目が合う。
「止める、な……続けろ」
息混じりな声。
快感は当然あって、身体は喜んでる……けど。身体だけ。心は楽しんでない。瞳が悲しげ。何かツラそう。どこか苦しそう。
友井もこんな瞳、してた。
コレは神野の計画なのに。
博己 がどこぞの誰かに壊されたのを清崇 にフラれたせいにして。お門違いの復讐で、清崇と僕を合意させて輪姦。精神を痛めつけてボロボロにしてウサバラシ。
最初に、博己がやめてって頼んだのに。
完全には壊れてなかった博己が、半分正気に戻って僕をやって。そのあと、八代と城戸と友井でマワして。
清崇が断固ノーしたのに。
博己が清崇をやるのを止めないで。止められないで。今、やってて。博己に言われて、僕にフェラさせて。友井も清崇にくわえさせて。
やってるコト、クズなのに。
傷ついてるふうなの、よしてくれない?
コレが終わって。もし、博己がおかしくなっても。
こっちには無関係。この取引は無効にしない。ハナからフェアじゃないそっちの条件をクリアするんだから、こっちの条件に反したら……許さない。
今後、二度と清崇と僕に関わらないこと。
たとえ、僕たちが恋人同士じゃなくなっても。
恋人同士のフリしてたのがバレても。
本当の恋人の存在を知られても。
紫道に手出しはさせない。
止めてた舌を動かして、神野のぺニスを舐める。吸い上げる。
時々聞こえる清崇のくぐもった喘ぎ声と、アナルに腰を打ちつけるグチョグチョ音と。一方的に清崇に語りかける博己の声をBGMに、ラストひとふんばり。
顎が疲れてくる前に、口の中の硬い肉がピクピクして。
「ッぅ……ッ!」
おとなしく静かにイッて出しきって、神野が腰を引いた。
「はっ……はぁっは……」
シーツに精液を吐き出し息をつく。
あとは……。
「ひアアッ! まッ……た、イッ! あアッくうッ……クッるッ!」
友井のぺニスは外されたのか、清崇が叫び。
「俺も、イクッ……さいご、一緒にッ清崇……ッん、アッ……ッ!」
「うア……ッアア、ヒッアアアッ……ッッ!」
博己もイッた。
やっと……終わる。
荒い息遣いがふたつだけ聞こえる湿った沈黙の中。
「きよた……か」
清崇のもとへ這う僕を、神野は止めなかった。
博己はまだ清崇のナカにいて。虚ろな瞳の清崇を見下ろしてる。
今、恋人を犯した男に。何て言うのがベストか、わからないけど。
泣くより喚くより罵るより……終わりを、わからせたい。
「僕のだから、返して」
演技はまだ続いてるから、ボロボロな感じで弱く。でも、キッパリと強く。
目を合わせて数秒後。
「うん」
博己が頷いて。清崇にキスを落とし。
「大好き、だったよ」
ぺニスを引き抜いた。
「んうッ……あ……」
「バイバイ、清崇」
「……ひろ、き……」
清崇が博己を呼んで。
「バ……イバイ」
別れの言葉を返した。
驚いた顔に淋しそうな瞳で薄く笑んだ博己は、満足なはず。
好きな男をレイプして。
傷つけなかったし、傷つかなかった……ラッキーだよね。
清崇を傷つけて、自分も傷つきたかったんだろうけど。一緒に壊れたかったのかもしれないけど。清崇は傷つかないから、傷つくとすれば博己だけ。堕ちた自分に耐えられなきゃ、壊れるしかないもん。
「龍介。理玖 。お願い、もう……おしまいにして」
博己が言った。
「わかった。終わりだ」
神野の口から、ずっと聞きたかった終了宣言。
「大丈夫か?」
「……大丈夫だよ。朝より昨日より、大丈夫」
友井に答え、博己が僕を見る。
「とーじが、あなたと清崇の友達連れてここに来ると思うから。シャワー……先に使って」
あ……そうだ。
坂口が来る。きっと。たまきと一緒に。幸汰 と一緒に。
紫道 と一緒に!
この格好じゃマズいでしょ。
画面越しにやられてるとこ見られてて、今更だけど。
ミマチガイだってシラきるつもりはないけど。
出来る限りはミギレイにしておくのが、せめてもの礼儀。
「え?」
ビデオ通話してたこと、清崇は気づいてなかったみたい。
でも。この話はあとで。
「清崇……」
身体を起こした清崇に抱きついた。
お互いの胸や腹にべとついてる精液は無視。やっと触れ合えた恋人同士の演出。このフリも、あとちょっとで終わり。
清崇も僕を抱きしめる。
「玲史……」
「行こ……うッ」
立ち上がろうとしてよろけた。
腰の痛みは強くない。アナルの痛みは鈍い。脚のつけ根の感覚がおぼつかない。
「つかまれ」
「ありがと……」
遠慮なく、清崇の肩を借りる。
フラつきながらも、僕を支えて立って歩ける清崇に感謝。
博己と神野が無言で見送る中、ベッドルームからバスルームへと向かう。ゆっくりペースで。ヨロヨロと。
リビングスペースにいた八代と城戸に、友井が何か話してる。
パーティーは終わり、解散!……とか?
「玲史……」
「待って。中でね」
話はバスルームに入ってから。
もうすぐそこだから……。
そこまであと1メートルのところで、ドアベルが鳴り響いた。
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