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150 くれるなら、残さないで:R
ナニ?
ココハドコ?
そう思ったのは一瞬。
目を覚ますのは、ほぼ100パーセント自分の部屋。よそで無防備に眠りはしないし、知らない場所に泊まることもほとんどない。
まぁ……今日のアレ、やられて飛んだのは例外。
だから。
いつものアラーム音じゃないスマホの音に反応して、身体を起こして。現状把握にかかったのは1秒足らず。
鳴ったのは電話の着信音。
部屋のライトがついてる。裸で毛布ナシ。エアコンであったかい。普通に夜寝てたんじゃない。
そんなのよりも。
目の前に紫道 。
快感に上気してとけた顔。汗ばんでフルフルしてトロトロになって、出来上がってる身体に特別なパンツはいたまま……なのに。目はシッカリと僕を見てる。欲する瞳で。すがる瞳で。
それで一目瞭然。
何があって何をしてたのか。何をしたのか。
眠りに落ちる前、何を考えてたのか。
「ちょっと待ってて」
紫道に微笑んで。
まずは、こっち。スマホ。誰から……あ、サキさん。スルーするとこだけど、電話なんてレアだし。気分いいから出よう……っと。
「どうしたの?」
ご機嫌うかがいとか、あり得ない。父親が倒れでもした?
『遅い時間にごめんなさい。今、大丈夫?』
取り乱したりしてないサキさんの声に、ホッともしないし残念でもない。
「うん」
『この前の返事、聞かせてほしいの』
あー……。
月1の夕食会で、年1で聞かれることがある。聞かれるってより、頼まれる。お願いされる。大したコトじゃないふうにしてるけど、サキさんの瞳はいつも強く真剣で。
『紬 さんと会って話す気はある?』
紬さんは僕の母親。彼女と一緒にいたのは3年くらいで、ほんの少しの薄っぺらい記憶しかない。何故か、父親じゃなくサキさん経由で聞かれるコレ。
僕に会いたがってる。話したがってる。それは本当だとしても。紬さんが直接僕に連絡取れないんだとしても。サキさんが夫の前妻とその息子の橋渡しをするのは不自然じゃない? 嫌々っぽくなく、けっこう親身に。
僕の返事はいつもノーだったんだけど、今回は……考えとくって言ったんだった。
何でか、何となく……。
紫道とつき合うってなって、心にユトリがあったから?
視線の先で、紫道が身体を震わせる。
ドライでイッたみたい。声が出ないように、自分の腕を噛んでる。涙目でこっち見て。静かに堪えてる。
ケナゲでかわいいこの男は、僕の恋人。大切な、僕のモノ。
僕を好きな男……。
だってさ。
ほら。
腕、血が出てる。デカくて重い紫道をやっとで転がして取り替えたシーツに、シミがある。濡れたペニス勃てて。前出しアナル拘束パンツは脱いでない。今も、エネマに前立腺攻められるまま。
自分で外せるのに。
外さないで、快感に耐えてる。
何回イッたの?
声漏らさないのは、僕が眠ってたから?
外すと思ってたのが半分。
それか、僕を呼ぶと思ってたのが半分。
もしかしたら、限界超えてがんばるかも……って、どこかで思ってた。期待してた、みたい。何を?……わからない。
けど、ちょっと……感動?
だから。
「オッケー。会うよ」
初めてのイエスに、サキさんが息を飲む気配。
『あなた、変わったわね』
「そうかな」
『何があったの?』
「んー恋人が出来た」
僕が変わったとすれば。
何があったのかと聞かれれば。
コレしかないもん。
ムダなことは言わずに要点をダイレクトに話すのが常な人には、率直に。気分は上々だし。この人を、嫌いじゃない。むしろ、父親より好ましく思ってる。おいしい料理もくれるしね。
少しの間を置いて。
『そう。大切に思い合える人がいるのは幸せなことだから……よかった』
「うん。楽しいよ。すごくかわいい男なんだ」
間が空いた。
『男の人なのね』
あれ? 今さら、その反応?
「僕が抱くのは男だって、前に言ったじゃん」
忘れちゃったのか。ウソだと思ってたのか。
「とにかく。明日だっけ?」
『……ええ。マンションの前まで迎えに……5時でいい?』
「了解」
『じゃあ、明日。おやすみなさい』
「おやすみなさい」
通話が切れた。
明日。5時。10年ぶりの母親と会う。長い間、拒否してきた再会。
自分では特に変わった気はしないけど。会ってもいい気になったってことは、変わったのかなぁ……。
スマホを閉じて放り。心境の変化の原因、紫道を見ると。
「玲史……」
虚ろじゃない瞳で僕を見つめて。
「今、何時だ?」
時間を聞く。
「9時36分」
思ったより夜が更けてない。
眠ってたの、1時間くらい?
「どう? 気持ちイイでしょ、エネマ。気に入った?」
弱々しく首を横に振り、紫道が大きく息をつく。
「もう……外してくれ」
「まだイケそうじゃん?」
わざと言ってみる。
ユルくて小さい刺激で焦らされて絶頂。その痙攣でエネマが動いて強い刺激。でも、飛ぶ手前の快感。意識は手放せない。その波が続く。それがエネマのエグいところ。
イケるどころか、今もイッてるはず。
終わらない快感でツラいのは承知。
「自分で外せるのに……まだ足りないから抜いてないんでしょ?」
「……お前に外してほしい。俺を見て、満足してから……ッくッゥ……ッ!」
紫道が身体を反らす。僕の指を掴んで。瞳を濡らして。僕を見つめたまま。無機質なオモチャにイカされて……。
ダメ。
僕がイカせたい。
犯したい!
「外してあげる」
ベルト、3ヶ所も留めてあるのがうっとうしい。
紫道を仰向かせて。邪魔な布を脱がすってより剥がして。すっかり淫らに開いたアナルから、乱暴にエネマを引き抜いた。
「ンッアアッ……ッッ!」
間を置かず。激しくイッて痙攣する紫道のナカに、ペニスをブチ込む。
腫れた粘膜を削って。前立腺の凝りを削って。一気に奥へ。一番脆くて弱いトコロへ。理性も削る勢いで。
「ッひ、イッア……ッ! ウッぐッ……!」
叫ぶ紫道のナカをガンガン突く。
熱くなった血が巡って快感が巡って、広角が上がる。
楽しい。すごく。楽しい!
今までのセックスでの最短記録でイッた。
出した精液を押し込むように、直腸の奥にペニスを埋める。突いて埋めて。
ペニスの硬度は落ちてない。
紫道の叫びは止まらない。
甘く響く声が心地いい。
痛い? 苦しい? イヤ? 無理?
イイよね?
何でもしてくれって言ったじゃん?
全部ほしいんだもん。
くれるなら、残さないで。
全部、もらうから。
僕も残さない。
全部、あげるから。
抜かずの2発めのイキも、最短記録かも。
せり上がる射精感に抗わず。腰を回して熱い肉にペニスを擦りつけて快感を高める。高める。震えて引き攣れるナカが気持ちイイ。
「イッアアッ! れッあッひッアアッ! アアアッ……ッッッ!!!」
紫道が泣いてる。
快楽の中。
紫道を抱きしめて、精液を中に放つ。
身体だけじゃなく、ココロも気持ちイイ。
あー……幸せって……好きな男を抱くこと、だよね。
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