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初めてのデートです・2

「千代晴、ゆっくりしてます。お仕事遅れませんか?」 「ああ、今日は休みだからな。バイトの奴が俺の代わりに出勤してる」 「休み! 今日ずっと遊んでられますかっ?」 「まあそうだけど、別に出掛ける予定もねえし……」  ヘルムートがきらきらの瞳で俺を見つめている。細い尻尾もフリフリ揺れているし、明らかに「どっか連れてって」のサインだ。 「お前、故郷から逃げて来たんだろ。王子様だし、誰か連れ戻しに来るんじゃないか? フラフラ出歩かない方がいいんじゃねえの」 「大丈夫です、先生が上手く言ってくれてますから。おれ、旅行したことになってます。行き先が地球ってことも先生しか知りません」  それに、と今度は少し寂しそうな顔になる。 「それにおれ、第三王子です。兄様達ほど重要なお仕事してませんから、しばらくいなくなっても星に問題ありません」  末っ子王子様の扱いがどんなものなのかは分からないが、王家の者である以上は「旅行したまま戻らない」では済まないだろう。繁殖期がどうのと言っていたし、親御さん的にはほんの数日出掛ける、程度の認識なんじゃないだろか。  もしもこの部屋にヘルムートを奪還しようとする奴らが来たら、俺一人で戦えるだろうか……。 「千代晴?」 「ん? ああ、何だっけ」 「千代晴、デートです!」 「デートか……」  戦えるかどうかはともかく、今の問題は今日のデート。そんなもの久し振り過ぎて、どこへ連れて行くべきかパッと思い浮かばない。  普通は映画とか遊園地、動物園とか……。  食べ終わった茶碗を流し台に持って行きながら、俺は頭の中でデートというものを思い出そうとした。 「いや出掛けるのもいいけど、それよりまずは生活をどうにかしねえとだもんな。お前、一着しか服持ってねえし」 「服はいっぱいあります!」  ヘルムートが尻尾を振って寝室へとふわふわ飛んで行く。俺の服が詰まったクローゼットを開け、何やら物色している様子だ。 「どれ着て行きましょう! 千代晴との初めてのデート、カッコいいの着て一緒に歩きたいです!」 「お、おいおい。それ全部俺の服だぞ。サイズが合わねえだろ」 「青と黒、大好き……でも、白のもカッコいいです! 色々あって迷います!」  駄目だ、全然聞いてねえ。  どうやら今日はもう、ヘルムートの服や生活用品を買いに行くしかないようだ。……どうして俺が自腹を切って王子様の私物を買ってやらなければならないのか、府に落ちないけど。 「すぐ着替えますから、千代晴、待ってて下さいね!」 「あー、ゆっくりでいいぞ。ゴミ出してくるし」  万が一追手が来たとしたら、遣った金をまとめて請求してやる。

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