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静かな青の世界へと

「千代晴。……千代晴、起きてください」 「んぁ……?」  ヘルムートの声で目が覚めた朝。窓からさんさんと降り注ぐ日差しが眩しく、思わず目を細める。 「千代晴……」 「何だよ……って、お前、何てカッコしてんだっ……!」  お目覚め一番、俺の上には全裸のヘルムートが跨っていた。太陽光に照らされた真っ白な肌が、いつも以上に光り輝いている。 「千代晴。おれとセックスして欲しいです……」 「何言って……何だよマジで突然っ!」 「おれもう我慢できません。千代晴の赤ちゃん欲しい……」 「ヘ、ヘル……」  肌は真っ白なのに乳首だけは薄桃色で、……俺の腹の上でぴんと勃っているソレも、綺麗な桜色で…… 「ヘルムートッ!」  理性が吹き飛び、俺はその芸術的な肉体にむしゃぶりついた。 「あんっ……千代晴、きゅうに、ぃっ……」 「煽ったのはお前だからな、後で文句言うなよ!」 「ああぁん、千代晴ちんのぶっといの気持ちイイィ!」  ――あれ? 「っ……!」  ベッドから飛び起きた俺は全身冷や汗状態で、「今も腕に抱きしめているソイツ」の顔を見上げた。 「ニヒヒ、千代晴ちんてば朝から大胆! どんな夢見てたの~?」 「ナ、ナハト……てめぇ……」 「でもキミなら一発ヤらしてあげてもいいじょ。本当なら日本円で五万は頂くけどね!」 「てめえぇ――ッ!」 「がふっ……!」  思わず渾身の右フックを喰らわせてしまった。俺の上から転がり落ちたナハトが床に尻餅をつき、「あいてて」と赤くなった左頬を擦っている。 「んん~。めっちゃいいパンチ。刺激的過ぎて勃っちゃいそう」 「マゾ野郎め……! 勝手に人の上乗って何やってんだ……ていうか自分の部屋帰れ、隣だろ!」  ヘルムートはソファの上でくうくう寝ている。……見られてなくて良かった。 「ボクもパートナー作りたいなぁ。SかMに極端に偏ってるイケメン、千代晴ちん知らない?」 「知るかっ!」  つまんなーいの、とナハトが俺から降りてリビングの方へ向かった。 「日本て平和過ぎてやることないよねぇ。やることないからカフェオレでも飲もっと」  勝手に冷蔵庫を開けてカップのカフェオレを取り出すナハト。あの夢の続きは惜しいが、すんでのところで目覚めることができて本当に助かったと思う。 「日本も言うほど平和じゃねえよ。それか、刺激が欲しいなら海外のスラムにでも住めばいいじゃねえか」 「ボクは構わないけど、ボクが日本からいなくなったら皆が悲しむからさ」  誰が悲しむというんだ、一体。 「それよりさぁ。キミ、まだボクのことあんまり信用してないでしょ」 「まあな」  ストローを咥えたナハトが眉間に皺を寄せ、頬を膨らませる。 「まあ疑われるのは慣れてるし普段なら全然気にしないけど、今回だけは信用されないと仲間に入れてもらえないからね。キミ達を応援してるってこと知ってもらうために、ボクいま絶賛『円』稼ぎ中なんだよ」  そう言ってカフェオレのカップをテーブルに置き、ナハトがポケットから預金通帳を取り出した。

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