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光射す未来へ

20XX年、地球を経って約二年後── 「千代晴! ハッピーベリーロールと、ふわふわシフォンが二つです!」 「あいよ!」 「千代晴ちん、チョコタルトも三つね~」 「おう!」  桃色の空。ソーダの海。優しく豊かな自然に溢れた楽園の星、プラネット・クーヘン…… 「めっちゃくちゃ忙しいっ!」  俺は今、ヘルムートの故郷であるこの星で小さなカフェの店長をやっている。 「千代パパ、おれも手伝う!」  ふわふわと宙を飛ぶブラウも来年は四歳、そろそろ幼稚園に通う予定だ。今ではだいぶヒトの形になっていて、クリオネの要素は頭にある二つの小さなツノのような部位と、背中に残った翼足くらいだ。 「ありがとうな、でも大丈夫だぞ!」  水色の綺麗な髪を撫でてやると、ブラウがくすぐったそうに笑って宙返りをした。服の趣味はヘルムートの影響か、今日はウサギのドクロTシャツを着ている。 「ブラウ、パパの邪魔したらだめですよ。お友達と約束あったはずです」 「ヘルパパ」 「あんまり遠くまで行ったらだめですよ。お家が見えるところで遊んでくださいね。あと、お昼の時間になったら一度帰ってくださいね」 「うん! いってきます~」  のんびり屋なブラウの性格は間違いなくヘルムートの遺伝子を受け継いでいるからだが、当のヘルムートはなかなかの父親ぶりを発揮している。俺がブラウを甘やかすと「だめです!」なんて叱られて、俺もブラウと一緒にしょんぼりすることもあるくらいなのだ。 「大変ね~、パパは」 「……ナハト。お前はコッチにいていいのか? 手伝ってくれるのは有難いが、瑠偉が待ってるんじゃねえの?」 「今はお互い、長期休暇中~」 「また喧嘩でもしたのか?」 「だって聞いてよ千代晴ちん、瑠偉くんってばさ!」 「変わんねえなぁ、お前らも……」  ナハトとは今でも親友だ。たまにこうして瑠偉と痴話げんかをして、家どころか星を飛び出して来るのだが――完全な子供目線になって一緒に遊んでくれるナハトなので、ブラウは物凄く懐いている。  衛さんとはビジョンを通して定期的に話をしている。近況報告から始まってケーキ作りの相談、衛さんの再婚の相談、その他くだらない笑い話まで色々と。 「繁盛しているようだね、ヘルムート」 「あ、兄様!」 「どうもです、アデリオさん」  キラキラのオーラをまとうヘルムートの兄・クーヘンの第一王子であるアデリオも多分に漏れず大の甘党だそうで、たまにやって来ては王宮の者たちへの土産にと、ありえない量のケーキを買って行く。事前に言って下さいと頼んでもすぐ忘れてしまうのは、何となくヘルムートの兄らしい。 「ヘルムート、父様が寂しがっていたよ。ブラウがなかなか遊びに来てくれないって」 「あはは。ヒトの足で走れるの嬉しくて、しばらく海じゃなく陸遊びがいいみたいです……。でも明日のお休みは、お父さんとずっと過ごそうって思ってます」 「明日か、分かったよ。千代晴さんも来られるのかな……?」  そわそわした様子で、アデリオ王子が俺に視線を向ける。何が言いたいのかは分かっていた。 「もちろん! 土産にデカいケーキ持って行きますんで、楽しみにしていて下さい」 「そ、そうか……! よろしく頼むよ、千代晴くん。それからナハトも、是非おいで」 「招待状なくても行きま~す!」

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