74 / 74

光射す未来へ・2

 夜――。 「月が出てると、空の桃色が薄く見えて綺麗だな」 「地球の夜とはまた違う美しさです」 「ああ」  浜辺に座った俺とヘルムートは静かに寄り添いながら、波打ち際ではしゃぐブラウを見つめていた。 「次にまとまってお休み取れたら、地球にもまた遊びに行きます! 瑠偉くんにも衛さんにも会いたいです」 「そうだな、俺の親もヘルとブラウに会いたいってよ」 「千代晴。おれ、宇宙でイチバン幸せです」 「……俺もだよ」  月明かりの下で唇を重ねようとした、その時。 「パパー! お腹すいたー!」  ブラウの叫び声が浜辺に響き、俺もヘルムートも一瞬ビクリと体を震わせた。 「っ……、お、おう! そろそろ帰るか!」  立ち上がり、うんと背伸びをする。 「しゅわしゅわの海、明日いっぱい泳ぐ! お爺ちゃんが背中乗せてくれるって」 「楽しみだな!」 「ブラウ、夜ごはんはソーセージ焼きますよ」 「やった! ソーセージ大好き!」  俺はブラウを肩車し、ヘルムートと手を繋ぎ歩き出した。見上げれば、地球にあるのと同じ月が優しく海を照らしている。 「楽しいこといっぱい!」  夜空に響く笑い声を、暖かな夜風が運んで行く。俺を見上げてはにかむヘルムート。その愛しい小さな手を強く握れば、遠くでクジラの歌が聞こえた気がした。 ヘルムートのおもちゃ箱!・終

ともだちにシェアしよう!