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マジかっけー! 応援団団長・土方誠 6

「そう言わずにさあ。せっかくの機会だからアニメキャラのコスプレで出るとか、それが無理ならメイドかセーラー服がいいな」  よだれをたらしかねない様子の青柳の言葉に赤木が同調した。 「オレとしてはボンテージが一押しだけど、メイドも捨て難いなあ」 「……てめえら、ブッ殺す!」  続けざまに俺が罵詈雑言をまくしたてると、赤木は慌てて話題を変えた。 「そういやさっき、機械工学科の院生だっていう人に声を掛けられたんだけどさ、その人が今度、尺八同好会を作るから入会しませんか、って誘ってきたんだよ」 「尺八って虚無僧が吹いてる、あの竹で出来てるやつ?」  その場には居合わせていなかったらしく、青柳は尺八を吹く真似をしてみせた。 「そう、それそれ。その人、なかなかイイ男なんだけど、どうしてそんなジジくさいこと始めたのかな。オレが遠慮しますって答えたら、メゲずに他の人を勧誘してたっけ」  尺八がジジくさいだと? 普通の若者ならそう受け止めるのも無理はないけど、邦楽器をバカにされたようで俺としては面白くない。箏や三味の稽古なんてずっとサボッているくせに、ゲンキンなものだ。  練習をサボッていたヤツの言葉としてはしらじらしいかもしれないが、御袋たちが教える、わびさびを愛する和の世界は嫌いじゃない。女々しいというイメージで捉える人もいるだろうけれど、箏曲家で『春の海』を始めとする、数多くの名曲を残したのは宮城道雄だし、茶の湯はもともと武士のたしなみ。家元と呼ばれる人に男性の多いところからしても、決して女だけの世界ではない。

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