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ミスコン終了 それマジっスか? 2
客席からの賞賛を浴びながら、俺はひたすらスクリーン裏の気配を窺っていた。聖爾は到着したのか、そろそろ始めないとマズイだろうに。ええい、こうなったらイチかバチかだ。
俺は三の絃に左手の中指を置き、八と十の絃にそれぞれ爪を掛け、そんな俺の様子を横目で見ていた誠さんは急いで尺八を構えた。
タン、タカタカタカタン……さっきの十七番と同じ春の海、これで尺八の音が出ずに二度も演奏失敗となれば、さらなるブーイングは免れない。頼む、間に合ってくれ……
次の瞬間、まるでフルートのような高らかな音が響いた。柔らかく清々しく広がるその音はまさに春の長閑で穏やかな海、エメラルドグリーンの波に優しく包み込まれたような気分で、俺は箏を奏で続けた。
青空にかもめが飛び交い、白い波頭が踊る。新しい季節の訪れを喜ぶこの雰囲気は別れの場面には似合わないが、それでも皆、うっとりと聴き惚れている。
互いに離れた位置で演奏しているのに、一度も合奏した試しはないのに、聖爾と俺の息は最後までピタリと合って大成功。曲が終わると割れるような拍手が鳴り響き、なかなか止みそうにないが、いい加減に区切りをつけなければと一礼したところ「ちょっと待ってよ!」という、女の金切り声が響いた。
舞台に飛び出してきたのは仁王立ちの宇宙人・エイリアン桃園で、もの凄い形相でこちらを睨みつけ、誠さんを指すと大声で喚いた。
「この人、今の演奏で尺八吹いていなかったのよ、吹いていたのは十七番で出た豊城聖爾さん。アタシ、知ってるんだから」
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