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ミスコン終了 それマジっスか? 12
俺と一緒に三曲の部室へ行こうとする誠さんと、応援団の部室に戻ろうとする黄山の綱引きが続いたが、と、その時、黄山は勢い余って誠さんを突き飛ばし、誠さんに押し出される格好になった俺の、痩せで体重の軽い身体ははずみで階段の手すりを簡単に越え、背中から落下した。
「うわあっ!」
頬で風を切る感触、このまま落ちるしかないのか、もうダメだと覚悟を決めた俺だが、次の瞬間、身体がふわりと浮いた。
「……ね、だから大丈夫って言ったでしょ?」
山桃の木、ピンクの着物、青いシャツを着て微笑む少年……初恋の人……
あの日の光景がフラッシュバックする。
「大丈夫、って、怪我してるじゃないか!」
そう叫んだ俺はハッと我に返った。あの日と同じ笑顔がこちらを見つめている。
俺の身体は聖爾の腕の中にあった。なかなか戻らない俺を心配して様子を見に出たとたん、四階廊下の騒ぎを聞きつけた彼が助けてくれたのだ。
「ほら、怪我なんかしていないって」
「だ、だって、だって……」
どうすればいいんだ、涙が溢れて止まらない。泣きじゃくる俺を強く抱きしめた彼は「いつまでたっても御転婆で泣き虫だね、お姫様」と優しく囁いた。
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