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 頭の中で3秒数えてから飛び降りる。  無駄なことは考えない。  ただ、落ちていくだけ。  先程からこの三文をひっきりなしに脳内で再生し始めてから、早10分。  俺は中々学校の屋上から飛び降りれないでいた。  飛び降り自殺だなんて、よくある話だ。  だから俺もそのよくある話にあやかろうとした。それだけ。  季節はもう春が終わり、遂に夏に突入しようとしていた。爽やかな空気は去り、じんわりと汗が出そうな生暖かい風が俺の髪を揺らす。  この風が飛び降りる後押しになってくれないものかと密かに願ってみたものの、逆に引き止められるように感じてしまう俺は馬鹿なのだろうか。  今は授業中。誰もここに来ないし、どこからも見られないように死角を選んだ。  本当は昨日に死ぬ予定だった。  遺書も書いた。  だが、思いのほか決心がつかずに今日こうして柵の外側に立ってすぐにでも飛び降りれるようにしているということだ。  緻密に練ってきた計画は、俺の情けない意思ひとつで簡単に止まる。  終われば楽になる。  なのに楽になれないのは俺が飛び降りないせいだ。  男だろ! 男ならさっさとやってしまえ!  頭をぶんぶんと横に振り、ゆっくりと深呼吸をしてばくばくと大きな音を奏でる心臓を鎮める。  ちゃんと鎮まったかどうかは別として。  よーし、いくぞ、さんにいいちって言ってから降りるんだ。よし…… 「さーん、にーい、い……」 「どうした少年。自殺か?」  不意に後ろから聞こえてきた男の声に、ついびくっとなってカウントダウンをやめてしまう。  ばっと振り返ると、そこには我がクラスの担任が突っ立っていた。  なんと、煙草を手にしながら。 「……学校で煙草とか、教師がやっていいことですか」 「学校で死のうとしてる生徒に言われたくないでーす」  染めた痕跡のある、やや毛先が茶色がかった髪が風に揺られる。  女子生徒には、顔だけ見れば超イケメンと言われているが口を開けば残念だと誰もが言う。  こういうのを残念イケメンと言うのだろうか。 「やめとけよおまえ。俺のクラスがひとり欠けたら人数が奇数になっちまうだろ」 「そんな動機で止めに来たんですか」 「なんだ、好きだから止めに来たとでも言ってほしかったか?」 「……」  にやにやと不敵な笑みを浮かべながらそんな揶揄混じりなことを言うものだから、つい身体の力が抜けてしまった。  邪魔された……  はあぁと大きくため息を吐くと、先生も白い煙をふっと吐き出す。  副流煙の臭いが風に乗って俺の元までやってくる。  なんで止めに来たんだ。俺のことなんて興味ないだろうに。 「邪魔しないでください。先生には関係ない」 「仮にも担任なんだからさぁ、仮にも。最期に自殺しようとした理由くらい聞かせろよ」 「……はぁ……」 「失恋か? 可哀想に」 「いや別に」  そう言い放つと、そうなの!? とでも言わんばかりに目を見開き俺の顔を見てくる怠慢教師。  この……

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