ふたりの先生が机を挟んで椅子に座り、手を握り合った。 　麻橋先生が不敵に微笑んだのがスクリーンいっぱいに映し出され、周りの生徒が様々な反応をした。 『よろしいですか？　それでは……始めっ！！』 　判定役の生徒が手を離した途端、勝負が始まった。 　まあ、予想していた通り大倉先生がいくら力を入れても麻橋先生は微動だにせず、それどころか「ほらほら頑張ってくださいよ」とゲスなことを言っているのが遠くからも確認できる。 『大倉先生、頑張っているようですが一切動きませんねぇ！』 『まさかあの麻橋先生にそんな力があるとは……！　競技時間残り10秒！！』 　まさか本当に引き分けに持っていくつもりなのかな……と思っていると、麻橋先生が観念したのか優しく大倉先生の手を押し倒し、勝負がついた。 　おお、さすがにわざと負けるようなことはしなかったんだ。 『麻橋先生の勝利〜！！』 　カンカンカンと鐘の音がなり、麻橋先生が少しだけ笑顔を浮かべた。笑顔……というより、「勝っちゃった」と言いたげな顔。 　 「おお、ばっしーが勝った」 「力あんまりなさそうなのに意外」 「まあ女の先生に負けるわけないよな〜。てか、ばっしー女の先生との対決多くね？」 　次の勝負のために表示されたトーナメント表を見てみると、たしかに女の先生とが多いかもしれない。 　反対側のトーナメントに熊崎先生がいるから、あのふたりが戦うことは決勝戦にならないとなさそうだけど…… 　 　あのふたりが戦うことになったらめちゃくちゃ面白いだろうなあ、と思う。 　その後も対決は続き、意外にも女の先生が勝ったり小柄な男の先生が大柄な男の先生を瞬殺したりと、生徒たちが盛り上がる対決が繰り広げられる中。 『続いてはー……おっと！　今回最注目！　熊崎先生の登場だー！！』 　壮大な音楽と共にやってきたのは、普段と同じようなジャージに身を包んだ熊崎先生。 　遠くから見ても存在感が半端じゃない。あれに勝てるひとなんて絶対いないだろ。 　熊崎先生の登場に生徒みんなが歓声を上げた。熊崎先生は生徒指導の先生にも関わらず人気が高い。まあ、いい先生だしな。 『熊崎先生の相手をするのは、近藤先生！　どうぞー！！』 「ええっ、将希先生！？　大丈夫かよ！」 　優馬がそう反応した。 　ステージを見てみると、明らかに緊張した顔で近藤先生が入場してきた。 　あまりの体格差に、会場に笑いが生まれる。 『それでは、まず近藤先生から意気込みを聞いてみましょう！』 　近藤先生にマイクが渡される。 『が、頑張りまひゅっ……』 『おおっとあまりの緊張に噛んでしまいました！　近藤先生、可愛い！！』 　そんな司会の言葉に、ノリがいい生徒たちがかわいいー！　と大声で言い始めた。 　それによってさらに近藤先生の顔が赤くなっていき、しまいには両手で顔を隠してしまった。 　か、可愛い。