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『さて、オープニングセレモニー一発目は、我が高校教員による腕相撲大会です!』
『毎年特色ある教員企画ですが、今年は腕相撲大会なんですね〜』
『やはり注目はシード枠の熊崎先生ですね!』
この文化祭では毎年教員もオープニングセレモニーに参加していて、毎年とっても盛り上がる。去年は早口言葉大会だった。
今年は腕相撲なのか。結構女の先生には不利な気がするけど。
『組み合わせ表をステージ上に表示します! 我々もたった今初めて見るので、楽しみですね!』
その言葉の後、ステージの大画面には組み合わせ表が表示された。
この学校は教員の男女比がほぼ5:5だから性別を分けるのかと思いきや、男女混合。
とはいえ女の先生の全員が全員力が弱いわけではなさそうだから、結構生徒も盛り上がりそうな気がする。
実際、生徒からの歓声がすごい。耳が痛くなりそうなくらい大きな歓声だった。
組み合わせ表から麻橋先生の名前を探してみるとどうやらトップバッターらしく、相手は女の先生だった。
あのひとの普段の怠慢っぷりの演技からして、早々に負けようと思っていそうだけど相手が女の先生だったら手加減するのかな。
しかも、麻橋先生とほぼ同年代の若いか弱そうな先生。あれは手加減するに決まってる。
ステージに机がセットされ、判定役の生徒やマイク係の生徒が並んだところで先生が入場してきた。
『それでは早速始めましょう! まずは麻橋先生と大倉先生です! どうぞ〜!』
どちらの先生も生徒から人気だから、歓声が大きい。優馬も「おおー!」と声を出していた。
先生はいつも通り怠そうに歩いていて、対する女の先生は少し緊張した様子で歩いていた。
『まず意気込みを聞いてみましょう! 麻橋先生お願いします!』
マイクが麻橋先生に渡されて、先生が『あー……』と声を出した。
生徒たちが一斉に静まり、先生の言葉を待っている。
『合法的に女のひとの手を握れるなんて最高ですね』
『先生! それはちょっと危ない発言ですよ!!』
『なるべく長い時間握っていたいので引き分けを狙おうと思います』
『先生!!』
先生がそう言うと、会場が一気に爆笑で埋まった。
あのひとは全く……
ステージのスクリーンに先生のドヤ顔がドアップで映り、それに気づいた先生がスクリーン用のカメラにぱちーんとウインクをした。
女子が一気に湧き、男子は「イケメンを武器にするなー!」とブーイングを始めた。
いくら怠慢教師と呼ばれていても、全員イケメンには弱いらしい。
『大倉先生も、意気込みをお願いします!』
『えーと……麻橋先生も男性なので勝てないとは思うんですけど、全力を尽くします!』
にこっとガッツポーズを取りながら先生が微笑んだ。あの先生のファンの男たちが雄叫びを上げ、拍手が巻き起こった。
こんな盛り上がるのか。すごいな。
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