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その後も話は続く。
「すごく懐かしい気分になります。あ、俺たちにもそういうやり取りあったなあとか、見ていて楽しい」
「わかるなぁ……俺たちにも、若いときあったんだなって思いますね」
「今も若いですけどね」
「はは。24歳か……あいつも」
……ん?
「ブラコンだから、騒いでそうですね。さすが僕の弟だーって」
「スマホに弟のアルバムまで作っちゃうくらいだから、愛されてますよね、本当に」
「見せてもらった時は驚いたな。まじかよこいつ、みたいな」
話は、そこまでしか聞けなかった。
麻橋先生と近藤先生がその場から去り、歩いていってしまったから。
俺がここに立ち止まる理由はなくなったのに、俺は暫くその場から動けなかった。動こうとも思わなかった。
それよりも俺は、先生たちの会話を聞いて『もしかして、』の可能性が捨てきれなかった。
それは確定ではないし、もしかしたら違う誰かの話をしているのかもしれない。ここは東京で、俺の地元からは遠い。
偶然があったとしてもかなり低い確率だ。
だけど。だけど。
もし、俺が立てた仮説を真とするならば、色々としっくりくる部分がある。
先生たちは────……
『これより、オープニングセレモニーを始めます! 司会を担当させて頂きます、お願いします!』
『お願いしまーすー』
文化祭当日。
全生徒が集会用の講堂に集められ、全ての電気が消されて今は司会にライトが当たっている。
俺の隣には優馬と爽介がいて、何故か両隣を挟まれている。
整列しないといけないという決まりはないから自由に座っているんだけど……なんか、いつもより近いというか、なんというか。
「……ふたりとも、近くない?」
「んー、これは牽制」
「牽制……?」
「文化祭で調子乗るひとが律のこと連れ去っちゃうかもしれないでしょ。去年その未遂あったんだし」
「……あー」
ふたりが言っているのは、去年の文化祭のこと。
優馬と爽介が飲み物を買いに行っている間にひとりで待っていると四人くらいの三年生に無理やり倉庫に連れていかれて、危うく犯されてしまうところだった。
それがあって優馬は俺に対して過保護になったんだけど……今日は尚更、過保護がやばそうだな。
「別にもうそのことは気にしてないけど」
「いやいや。そう言ってまた連れ去られたら洒落になんないから。だからこうやって俺と爽介でサンドイッチするっていうね」
「……成程……?」
「それに俺、聞いちゃったんだよ。今日なら律とお近付きになれるかもしれないって言ってる三年生の会話」
俺はどうやら、男受けをする顔らしい。
だからか、上級生から急に声をかけられたりとかは今までよくあった。行事ともなれば特にそれは多かった。
俺は気にしていないし、別に俺なんかどうなったって構わないけどこのふたりはそうではないようで、俺のことを守ろうとしてくれているらしい。
嬉しい……けど。そこまで弱くもないんだけどな。
「馬鹿だよねー……俺らっていう存在がいて、律に手出せるって思ってるとか。レイプとかそんなの絶対許さないから。俺が使い物じゃなくしてやるよ、そんな奴らのチン……」
「ストップストップ!!」
爽介は、去年の俺の文化祭の件があって多少ブラックになった。
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