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7-10
それから二週間弱、文化祭の準備をする時間が続いた。
台本無しで合わせたり、出し物の準備を全員でしたり等。必要なのものの買い出しをしたり、普段の学校生活ではしないようなことがとても新鮮だった。
去年、ここまで楽しめてたっけ……なんて、思っても仕方がないことを思ってしまう。去年は自分の素を極めて出さないようにしていたから、ただの学校行事で終了した気がする。
楽しいと感じることもなくて、なにか特別な思いもなくて、今みたいに皆と協力しようなんて思ってもいなかった。
皆で協力しても後には残らないものなんだからどうだっていい……なんて、そんなことを思っていたけれど今となっては形に残るものでなくてもいいから楽しい時間を過ごしたいとまで思ってしまっている。
まさか俺がこんなことを思うなんて、去年の俺が知ったら驚くだろうなと思いながら自販機へ向かう。
作業をしていたら喉が渇いてしまい、許可を取って飲み物を買いに来た。
今は男子がペンキを塗る作業をしていて、女子はひたすら教室の飾りを作っている。
そういえば、爽介の分も買わないといけなかったっけ。
爽介だったらなにを飲むかな……と少しだけ悩み、俺の分のお茶と爽介の分の天然水を手に、教室に戻ろうとした。
すると、誰かの話し声が聞こえた。
盗み聞きをする趣味はないから、早めに戻ろうとして……ふたりの人影を確認し、すぐ近くの木の影に隠れてしまった。
麻橋先生と、近藤先生だ。
どこに行ったんだろうと思っていたけれど、まさか近藤先生と話していたなんて。
俺は教室から一番近い中庭の自動販売機に飲み物を買いに来た。
中庭の舗装された通路を通るのが近道なんだけど、考え事をしていたら少し遠回りをしてしまった。
物置の近くに先生ふたりがいて、近い道で通ろうにも確実にふたりに見られてしまう。別に気にしないで通ればいいものの、ほんの少しの好奇心で木の影に隠れたまま聞き耳を立てることにしてした。
「どうなんですか、そっちのクラスは」
「みんな張り切ってますよ。やっぱり行事になると生き生きしてて楽しそうだ」
「それはよかった」
先生の間でも文化祭の話か。
たまに近藤先生が様子を見に来たりしていたから、俺も何回か話したりした。
あのふたりは友人だって言ってたけど、校内ではさすがに敬語を使っていると聞いた。それでもなんとなくふたりの間の空気が穏やかというか、仲良いんだなというのがわかる。
どういう接点なんだろう、と思ったことはあるけれど聞くのは野暮かなと思って俺は知らないままだ。
「なんというか……柊羽先生のクラスの、あの三人。俺らに似てますね」
「……たしかに」
近藤先生が言っている、三人。……たぶん自惚れでなければ、俺と爽介と優馬のことだと思う。
俺らに似てるって、一体?
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