1 / 76

第一章 僕を抱いて!

 ちらりと、沖 白穂(おき しらほ)は時計を見た。  授業終了まで、あと5分。  白穂の胸は、とたんにワクワクし始めた。 (あと5分。あと5分で……)  あと5分で、授業は終わり。  そしてその後には、一日最高のお楽しみが待っているのだ。  ああ、それにしても5分がなんて長いんだ!  白穂は、気もそぞろで5分間を過ごした。  ようやく終業のチャイムが鳴り、教師がテキストを閉じる。  挨拶をし、教室は開放的な空気に包まれる。  お昼休みが始まったのだ。  しかし白穂は別に、お昼の弁当を楽しみにしていたわけではない。  サンドウィッチと、カフェオレの詰まった水筒を手にすると、急いで教室を飛び出した。

ともだちにシェアしよう!