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第一章 僕を抱いて!
ちらりと、沖 白穂(おき しらほ)は時計を見た。
授業終了まで、あと5分。
白穂の胸は、とたんにワクワクし始めた。
(あと5分。あと5分で……)
あと5分で、授業は終わり。
そしてその後には、一日最高のお楽しみが待っているのだ。
ああ、それにしても5分がなんて長いんだ!
白穂は、気もそぞろで5分間を過ごした。
ようやく終業のチャイムが鳴り、教師がテキストを閉じる。
挨拶をし、教室は開放的な空気に包まれる。
お昼休みが始まったのだ。
しかし白穂は別に、お昼の弁当を楽しみにしていたわけではない。
サンドウィッチと、カフェオレの詰まった水筒を手にすると、急いで教室を飛び出した。
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