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第一章・2

 美術室に駆け込んだ白穂は、いつものように窓辺に静物を整えた。  しかし白穂は別に、静物画を描くために美術室へ入ったわけではない。 「……来た!」  サンドウィッチを食べ終えた頃に、いつもの彼がやって来た。  一階の窓から見える、中庭のベンチに腰掛け読書を始める少年。  白穂と同じ高校2年生の、結城 希(ゆうき のぞみ)だ。  静かに本を読む希を、白穂は溜息をついて眺めた。 「カッコいいなぁ、結城くん」  頭脳明晰、スポーツ万能、眉目秀麗。  そして、優秀な遺伝子を持つα。  非の打ちどころのない彼が、ここで読書をする習慣を持つことを知ったのは、つい最近のことだ。  つい最近のことだが、彼を描いたスケッチブックは、もう3冊になっていた。  美術部員の白穂は、こっそり彼の姿をデッサンしていたのだ。

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