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第一章・3

 鉛筆を走らせながら、白穂は思った。 「いつか堂々と、モデルになってください、って言えないかな」  でも恥ずかしいし、無理だ。  Ωの僕が、αの結城くんに声をかけるなんて。  男女を問わず人気のある希を独り占めできるほど、自分は魅力的な人間とは思えない。  ちょっぴりブルーな溜息をついた白穂だが、次の瞬間には身を乗り出していた。 「結城くんが、足を組みなおした!」  いつも左足を下に組む彼が、右足を下にした。  これは、新しいポーズだ!  白穂は夢中で希を描いていたが、昼休み終了5分前のチャイムが鳴った。 「え、嘘! もう、終わり!?」  あと5分で、授業が始まる。  希は本を閉じてベンチを立ち、白穂は肩を落として鉛筆を置いた。 「いつか堂々と、モデルになってください、って言えないかな」  もう一度、同じことを繰り返し思った。  時間を気にしないで、のびのび彼を描いてみたかった。

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