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第一章・4
部活を終え、白穂は自宅へ帰った。
明かりの灯っていない部屋へ、独り。
父は画家だが、自分の絵を売るだけでは食べていけないので、カルチャースクールで絵画教室を開いている。
彼の帰る時刻はいつも遅く、白穂はいつも一人で夜を過ごしていた。
簡単な夕食を終え、自分の部屋へ入ると、すぐにスケッチブックを取り出した。
ぱらぱらとめくり、今日新しく描いた希をもう一度見直す。
「少し、影を付けてみようかな」
中でもお気に入りのデッサンに手を加え、完成度を高めることが最近の日課になっていた。
ところが、困ることが。
自分でも、困惑することが白穂の身に起きていた。
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