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第八章・8
「僕、こんなに幸せでいいのかな……」
うっとりと、白穂がつぶやく。
「いいさ。世界中の幸せ、独り占めしちゃいなよ」
「このまま、時が止まればいいのに」
頬を摺り寄せる白穂に、希は笑った。
「それは困るな。この時を止められると、ここで幸せが終わってしまう」
これから僕たちは、もっともっと幸せになるんだよ。
そう言って、白穂の鼻をつまんだ。
「うん。希と一緒なら、もっともっと幸せになれるね」
「そうさ。白穂と一緒なら」
温かなぬくもりをほどくと、二人は理乃を挟んで横になった。
「そして、理乃も一緒だよ」
「うん」
三人で川の字になって、幸せを噛みしめた。
時は止まらず、流れ続ける。
幸せと共に、流れる。
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