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雪虫 12
「思ったよりもきちんと生活してますね」
「そう言う仕事だろ?」
「え?」
え?ってなんだ?
「あー……いや、雪虫とは仲良くやってる?」
引っ掛かりを尋ねる前に問いかけられてしまい、はぐらかされた感が残る。問い詰めてやっても良かったが、ここは仕事と割り切って流す方がいいだろう。
「あんまり」
「やっぱり?」
そう言って直江が見る方向には、警戒とまではいかないけれど、こちらを睨んでいる雪虫が身を縮こめていた。
「荷物持ってきてくれたんだから挨拶くらい 」
「 こんにちはっ」
「はい、こんにちは。凄いね、挨拶した」
それくらいはするだろう?
「初めてかな、挨拶してもらったの」
あはは と力なく笑う直江は仕事はこれだけなんでと言って帰って行った。
直江が帰ったのを確認してから、雪虫はやっとリビングの本の方へと近寄ってきた。
そろそろと窺いながら何があるのか見にくる姿は、警戒しつつも餌を食べにくる猫のようだった。
「直江さんは苦手なのか?」
本をサイズ別、傾向別にざっと分ける。
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