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雪虫 落ち穂拾い的な 22p

「何をニヤニヤして   」  煙草を吸って戻ると、先生とセキがやけに近づいてニヤニヤしている。  苛立ちのままに引き離そうかとも思ったが、セキの視線が手の中のタブレットにあるのに気がついた。  それには、ここの監視カメラの画像が映っているはずだ。 「青春だよー」 「青春ですねー」  二人してニヤニヤと覗いているのは雪虫を寝かせてある部屋だ。 「  いい趣味だな」  馬鹿らしくなってもう一本吸って来ようと踵を返す。 「だって見て御覧よー!デコちゅーだよデコちゅー!」 「わぁぁぁぁぁぁぁいいなぁぁぁぁぁ!」 「初っ端にアフターピル用意させた誰かさんと違って可愛いじゃないかー!」  ぐっと喉に何かがつっかえて咽せた。 「大丈夫ですか?」  いがらっぽい喉をなんとかしようとして咳払いをした。  飛んできて背中をさするセキを、先生がやはりニヤニヤと見ている。 「    セキ」 「はい?」  応えて見上げたセキの額に、ちょんと唇をつける。 「へっ  」 「羨ましかったんだろう?」 「   っ  、はい!」  先生がこちらをニヤニヤと見ている気配だけがする。柄にもないことをしたとは思うが、目をキラキラさせて画面を覗き込むセキに、つい釣られた。 「ありがとうございます」  目の縁を赤らめて嬉しそうに飛びついてくるセキを反射的に抱き締めると、先生がますますニヤニヤしているようだったが、あえて見ずにセキの背中を押した。 「風呂に入るぞ」 「すぐ用意します!背中流しますね!」  セキは嬉しそうに飛び跳ねて俺の後を追いかけてきた。 END.

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