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ひざまずかせてキス 6

 力一杯突っぱね、その隙に膝の辺りに引っかかっていた下着を取り払う。 「あと二十五分だ」 「えっ⁉︎三十分ってマジなの⁉︎」 「早く済ませろ」  ぐっと一瞬歯を食いしばり、足を開いて腰を上げて突っ伏する。  服従を示すようなそれは……毎回毎回、腸が煮え繰り返りそうになるほど屈辱だった。  ヤクザ と言う言葉は使われなくなって久しい。  表向きは。  フロント企業なんて言葉もあったが、今ではそれも体を成していない……と言うより、むしろ形を変えてそちらが主流だ。  新反解体法……新世代反社会解体法によって尽くそう言った組は解体された と、表向きはそうなっている。  故に大神の肩書は社長であり、オレの肩書は秘書だ。  それでなくてもシノギ先を削られ青息吐息の瀕死だった所に降って湧いた新反解体法に、母体組織である『神鬼組』も免れる事が出来ずに総長を始め幾人もの幹部がパクられ、ヤクザは組を名乗る事すら出来なくなった。  表面上は反社会勢力が一掃されて万事円満解決したかに見えたが、組と言う取り纏める場所が無くなり、警察に御用にならなかった者達はヤクザとして存在する事すら許されず、最終的に真っ当な社会に戻る事も難しいまま野に散る事となる。  お陰で組が纏めていたヤクザ達の身柄や情報が四散し、ヤクザは消えたが所属も素性も分からない、ましてやどこに繋がっているかも分からない「半グレ」がのさばるようになった。  とは言え、これまでのヤクザはヤクザと名乗れないまま、更に巧妙に活動する組織に一新して立て直されただけだった。  故に未だに、今はない筈の『神鬼組』の若頭が誰を指すかは、誰もが知っている公でありながら秘密の事柄だ。 「  ────では準備します」  そう言って立ち上がろうとしたら、大神が手で止めた。 「あかの護衛にはレヴィをつける」 「  っ、私では力不足ですか」 「適任だと言うだけだ。俺も書類を片付ける。その間、少し休むといい」  目の下を指されて、隈が出来ていることに自覚のあるオレは俯くしかない。 「管理が行き届きませんで、申し訳ありません」 「お前は働きすぎだ」  そう言うけれど、その言葉は大神にこそ相応しいのだと思う。  昼間、動ける内に各経営会社や挨拶回りに、夜は俺が休んでいる間に各会社の必要書類や報告書に目を通す。  そして、俺が起き次第書類の作成と指示表を作り、出掛ける。  秘書なんて聞こえのいい肩書を貰ってはいるが、実際は大神が俺に合わせて仕事を調節してくれているに過ぎない。  ヤクザが楽して金を得る……なんて、この時代には幻想なのかもしれない。 「  それから、問いただしはしないが、手に負えないようならば速やかに報告しろ」 「   はい」  と、素直に返事をしたのはいいものの、言えるはずがない。  オナってたらいきなり突っ込まれてハメ撮りされて、しかもそれをネタに脅されています……なんて。  しかも、相手は素人だ。

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