210 / 665
ひざまずかせてキス 14
ラーメンを頼んだのに何故か目の前に粥を出され、とろみのある白い物にゾッとした。
「いきなりラーメンと唐揚げとか、ないわー」
「このラーメン屋は客の食いたい物を食べさせてくれないのか?て、ラーメン屋にラーメン頼んだオレが悪いのか?」
「げーげー吐いといて油物とか、バカじゃねぇの?」
「うるっさい!ラーメン寄越せ!ラーメン!」
「え?ザーメン?」
ぐっと脱力感を感じて倒れるようにソファーに倒れ込んだ。
「もー……いい。金払うから帰れ」
「いやいや、帰ってたらのびるし」
「お前が食べるのかよ!」
オレの注文した物を食べ始めた相良を見遣り、もう溜息しか出ない。
……と、言うか、素直に注文したオレもどうかしてる。
「ほら!お粥さん食べとけって。わざわざ炊いてきたんだから」
「腹減ってない。 いらない」
「女子高生か!ちゃんと食えっ顔色悪いぞ」
それはお前と関わっているからだ の言葉を言う気力が湧かずに、深く溜め息を吐くだけで動けなかった。
「どろっとしたのも気持ちが悪くて無理だ」
もう聞かれてしまったことだ。
隠してもあれだし、粥をこのままにされても困るからはっきり言うと、相良はしげしげと器の中の白い粥を見てぴんと来たようだった。
「えー?ちょっとソウゾウリョク豊か過ぎない?」
「うるさい」
とろみのある……白濁の……
少し質の悪い客になれば、自分の精液を食事に掛けて食わそうとしてきた奴もいた……
ぐっと眉間に皺を寄せて、険しい顔をしていたんだろう。相良がラーメンを食べる手を止めて、窺うようにこちらを見ていた。
「なんだ?」
「具合よくなさそうだなーって心配してんだよ」
原因が、ナニか言っている。
「…………」
「悩みあるならさ、俺で良ければ聞くぜ?あんたとはもう他人って仲じゃな ぶっ」
下から抉り込むように拳を繰り出してやると、狙い通りにみぞおちにどすりと手が収まった。
固い筋肉の感触があるが、ダメージを消してしまえるほどではなかったらしい。相良は「う 」と呻いてラーメンを啜っていた箸を落とした。
「ぐっ ふっ ちょ、食べてる時にっ」
「うるさい!人の心配するんならメモリ寄越せ!」
「コレ?」
端の方がほつれてきているポケットからひらりと取り出し、思いの他器用な動きで指の先でくるくると回して見せる。
「じゃあ、コレはあげる」
「さっさと 」
「でもコピーもあったりするんだな」
ぐっと言葉が詰まる。
ともだちにシェアしよう!