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ひざまずかせてキス 14

   ラーメンを頼んだのに何故か目の前に粥を出され、とろみのある白い物にゾッとした。 「いきなりラーメンと唐揚げとか、ないわー」 「このラーメン屋は客の食いたい物を食べさせてくれないのか?て、ラーメン屋にラーメン頼んだオレが悪いのか?」 「げーげー吐いといて油物とか、バカじゃねぇの?」 「うるっさい!ラーメン寄越せ!ラーメン!」 「え?ザーメン?」  ぐっと脱力感を感じて倒れるようにソファーに倒れ込んだ。 「もー……いい。金払うから帰れ」 「いやいや、帰ってたらのびるし」 「お前が食べるのかよ!」  オレの注文した物を食べ始めた相良を見遣り、もう溜息しか出ない。  ……と、言うか、素直に注文したオレもどうかしてる。 「ほら!お粥さん食べとけって。わざわざ炊いてきたんだから」 「腹減ってない。 いらない」 「女子高生か!ちゃんと食えっ顔色悪いぞ」  それはお前と関わっているからだ の言葉を言う気力が湧かずに、深く溜め息を吐くだけで動けなかった。  「どろっとしたのも気持ちが悪くて無理だ」  もう聞かれてしまったことだ。  隠してもあれだし、粥をこのままにされても困るからはっきり言うと、相良はしげしげと器の中の白い粥を見てぴんと来たようだった。 「えー?ちょっとソウゾウリョク豊か過ぎない?」 「うるさい」  とろみのある……白濁の……  少し質の悪い客になれば、自分の精液を食事に掛けて食わそうとしてきた奴もいた……  ぐっと眉間に皺を寄せて、険しい顔をしていたんだろう。相良がラーメンを食べる手を止めて、窺うようにこちらを見ていた。 「なんだ?」 「具合よくなさそうだなーって心配してんだよ」  原因が、ナニか言っている。 「…………」 「悩みあるならさ、俺で良ければ聞くぜ?あんたとはもう他人って仲じゃな    ぶっ」  下から抉り込むように拳を繰り出してやると、狙い通りにみぞおちにどすりと手が収まった。  固い筋肉の感触があるが、ダメージを消してしまえるほどではなかったらしい。相良は「う 」と呻いてラーメンを啜っていた箸を落とした。 「ぐっ  ふっ  ちょ、食べてる時にっ」 「うるさい!人の心配するんならメモリ寄越せ!」 「コレ?」  端の方がほつれてきているポケットからひらりと取り出し、思いの他器用な動きで指の先でくるくると回して見せる。 「じゃあ、コレはあげる」 「さっさと  」 「でもコピーもあったりするんだな」  ぐっと言葉が詰まる。

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