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教えて!先生っ 13
黒い髪によく似合う黒い瞳、αらしい余裕のあるゆったりとした態度。
それが二人分で圧巻だ。
喋らせてもそうだけれど、黙っていたらますますどちらがどちらだか分からない。双子なのだから当然だろうに、それが不思議でじぃっと二人を見上げた。
「烏丸せんせーどうしたの?いい匂いさせて」
「めっちゃいい匂いさせてるよ?」
小さく鼻を鳴らした二人がそうオレを揶揄うから、虎徹先生が間に入って「めっ」とたしなめてくれた。
人の匂いを容易に嗅ぐことは失礼にあたる って言うのは、道徳の時間でも教える話だ。ただ実際は呼吸するだけで匂いって感じちゃうものだから、難しいところだよね。
「 ────って、匂う⁉︎」
飛び上がりながら尋ね返したオレに、双子は怯んでこくこくと頭を下げて、肯定して見せる。
この二人がαだと言うのはよく知っている。その二人がオレから匂いがするって言ってるんだから、これは決まっただろう!
虎徹先生もそう思ったのか、こちらを見上げでにまりと笑って親指を立てた。
「結果オーライだけど、解決だね!」
「ありがとうございます!いやぁどうなるかと……」
ほっとしたと同時に、授業開始前5分前のチャイムが鳴り響く。
「あっすみません!次は移動教室なんで準備がっ」
どんぐり眼を更に大きく見開いてから、虎徹先生は会釈した後風のように走り去っていってしまった。
あのスピードは止めるべきだったんだろうけど……今はそんなことどうでもいい、職員室のインスタントコーヒーでいいから乾杯して、拳を突き上げたい気分だ!
「虎徹先生、足はっや‼︎」
「びっくりだな!」
オレは次の時間はないから急ぐことはないが、授業前チャイムが鳴ったのだから、この二人も急ぐべきだ。
「えーっと 」
下の名前が思い出せず、諦めた。
「鷲見たちも授業だろ?早く行かないと 」
───と、襟を引っ張られてバランスが崩れた。
年季の入った床にぶつかるっ と思ったけれど、ぽふんとした感触に抱き止められると同時に足を払われて、呆気なく床へと倒れ込んだ。
でもそれも、温かい体の上だからか痛みは一切なくて……
「せんせー!違う違う!」
故意に転ばされたとは言え人を下敷きにしてしまって、焦るオレに呑気な声が降ってくる。
「あの時のみたいに、出鳳 と 」
「 凰珀 って呼んでくれなきゃ!」
むぎゅむぎゅと温かい男二人に抱きしめられているのに、顔色が真っ青になる程血の気が下がるのがわかった。
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