261 / 665

教えて!先生っ 13

 黒い髪によく似合う黒い瞳、αらしい余裕のあるゆったりとした態度。  それが二人分で圧巻だ。  喋らせてもそうだけれど、黙っていたらますますどちらがどちらだか分からない。双子なのだから当然だろうに、それが不思議でじぃっと二人を見上げた。 「烏丸せんせーどうしたの?いい匂いさせて」 「めっちゃいい匂いさせてるよ?」  小さく鼻を鳴らした二人がそうオレを揶揄うから、虎徹先生が間に入って「めっ」とたしなめてくれた。  人の匂いを容易に嗅ぐことは失礼にあたる って言うのは、道徳の時間でも教える話だ。ただ実際は呼吸するだけで匂いって感じちゃうものだから、難しいところだよね。 「 ────って、匂う⁉︎」  飛び上がりながら尋ね返したオレに、双子は怯んでこくこくと頭を下げて、肯定して見せる。  この二人がαだと言うのはよく知っている。その二人がオレから匂いがするって言ってるんだから、これは決まっただろう!  虎徹先生もそう思ったのか、こちらを見上げでにまりと笑って親指を立てた。 「結果オーライだけど、解決だね!」 「ありがとうございます!いやぁどうなるかと……」  ほっとしたと同時に、授業開始前5分前のチャイムが鳴り響く。 「あっすみません!次は移動教室なんで準備がっ」  どんぐり眼を更に大きく見開いてから、虎徹先生は会釈した後風のように走り去っていってしまった。  あのスピードは止めるべきだったんだろうけど……今はそんなことどうでもいい、職員室のインスタントコーヒーでいいから乾杯して、拳を突き上げたい気分だ! 「虎徹先生、足はっや‼︎」 「びっくりだな!」  オレは次の時間はないから急ぐことはないが、授業前チャイムが鳴ったのだから、この二人も急ぐべきだ。 「えーっと   」  下の名前が思い出せず、諦めた。 「鷲見たちも授業だろ?早く行かないと   」  ───と、襟を引っ張られてバランスが崩れた。  年季の入った床にぶつかるっ と思ったけれど、ぽふんとした感触に抱き止められると同時に足を払われて、呆気なく床へと倒れ込んだ。  でもそれも、温かい体の上だからか痛みは一切なくて…… 「せんせー!違う違う!」  故意に転ばされたとは言え人を下敷きにしてしまって、焦るオレに呑気な声が降ってくる。 「あの時のみたいに、出鳳(いずほ)と  」 「   凰珀(こはく)って呼んでくれなきゃ!」  むぎゅむぎゅと温かい男二人に抱きしめられているのに、顔色が真っ青になる程血の気が下がるのがわかった。

ともだちにシェアしよう!