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教えて!先生っ 31
打合せをしてるでもないのに、やっぱり不思議な光景だった。
「え? えっと、 」
「 い、いきまーす!」
「えぇっもう⁉」
「えっまだかな?」
そうやって緊張されると学芸会の本番のように見えてしまって、ふ と吹き出しそうになるのを堪えるために口を押えて俯く。
もたもたとお互いのタイミングを計っているのが面白くて……ぐっと息を止めて笑わないように力を籠める。
「「結婚してください‼」」
すべてをすっ飛ばしてのプロポーズに、ぶふっと吹き出した。
「あ、違った⁉︎」
「違うの⁉︎えっと……」
カンニングをしているのか、掌をちらちらと見る視線が気にはなったが突っ込まないでおくことにする。
「「息子さんを僕にください!」」
もう、口説き文句ですらないよ?
ん゛ん゛ と咳払いをしてやると、はっとなってこれもダメなのかとショックそうな顔をするのはー……天然だよね?
互いの掌を覗き込んでおろおろと戸惑い、視線で会話しては首を振り合っている。
口説くと言うならば雰囲気から考えるべきだと、ここはひとつ教えてやった方がいいんだろうか?
どうしてやろうかと溜息を吐くと、それを見てしょんぼりとした二人がオレの前に進み出て所在無げに手を取ってきた。
「 好き 」
「すごく好き」
「大好き」
「とっても好き」
「カッコイイ口説き文句とか 全然だけど」
「ちゃんと言えるように勉強するから!」
指先を掴む手が熱くて、どきどきとした鼓動を伝えてくる。
「だから、俺たちのになって!」
「俺たち以外の臭いをつけないで!」
「俺たちのもんだから!」
「誰にも渡さないから!」
幼さが残ると見る度に思っていた表情が意外なほど男らしくて……
この牡たちに求められるのが、悪くないって思えてしまう。
「俺たちが守るし」
「誰にも触れさせないから」
真摯なこちらを見る瞳にちらりと視線をやるともう……ホント、ダメだ。
自分自身がダメダメ過ぎてダメだ。
あんなに不快になって、怒って、悲しかったのに……許して受け入れよう!って気になってる自分がダメダメだ。
「いや、まぁ 他の奴んとこに行く気もないけどさぁ」
ドキドキうるさい胸を押さえてそう言うと、二人の顔がぱぁっと子供らしい笑顔になって眩しさで目がくらみそうだ。
伸びてきた四本の腕に抱きしめられながら、怒りそびれたことに反省しなきゃいけないんだけど……それが難しいのは、誘引フェロモンとか関係なく二人に惹かれているから かな?
温かい春の日差しのような匂いに包まれて、唯一無二の番に抱きしめられるのが幸せで、幸せで……
「せんせーは俺たちのだよね!」
「俺たちの番だもんね!」
小さくうんうんと頷いていたけれど……うん?
うーん?
唯一無二って言うのは、この世で一つしかないってことだろ?
番って、一人しかなれないんじゃないの?
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