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青い正しい夢を見る 8

「何事ですか?」 「まぁ清水さん?どうされたんですか?」  二人の年配の看護婦が飛んできて僕を起こし、頬の腫れを見て眉間に皺を寄せた。 「いえね、うちで預かったオメガが馬鹿にするものだから躾ですよ」  そう言うと、年配者二人は視線を合わせて頷き合い、支えてくれていた筈の僕を椅子へと再び突き倒し。 「あっ  いたっ  」 「オメガじゃしょうがないですね、無作法でしょうし、ちゃんとしておかないと周りが困りますもんね」 「痛いって、貴方大袈裟よ?オメガなんだからそれぐらいで何か言うんじゃないわよ、注意を受けたらありがとうございますって言わないと」  ────は?  あれは注意なんかじゃなかった。  僕は明らかに被害者で、奥様が叩いたのは間違いない筈なのに、どうして?この二人の中で加害者と被害者の立ち位置が入れ替わってしまっているんだろう?  僕を気にしてくれた老人も、なんだ と言う風な顔で待合のテレビの方へ顔を向けてしまい、もうこちらには何の注意も払ってはいない。  ぞっと した。  元々の外見のせいからか、性格のせいからか、侮られて軽んじられる事は多かった。けれど、これはそう言った物ですらない。 「それから次の種付けできる日を診てもらうのよ」  人間同士の会話ではなく、言葉の通じる家畜に話しかけるような態度だった。    眼鏡を掛けた頭髪の薄い医者は酷く億劫そうで、僕をちらりと見るとカルテに何事かを書き始めた。 「   じゃあ触診」  硝子を隔てた薄い目に睨まれて、びくつきながらもシャツのボタンを外すと向う脛を蹴られた。 「  っ」 「何やってんの、下着、早く脱いで尻出して」 「え  ?」  蛇に睨まれたような圧迫感に耐えながら、それでも医者の言う事だから とズボンごと下着を降ろして後ろを向く。それだけでも恥ずかしさで顔から火が出るかと思う程頬が熱くなったのに、医者は椅子に手をつけと溜め息混じりに指示を出す。  例え医者相手でもそんな体勢を取るのを躊躇われて、戸惑っているとバシリと鋭い音がして右足の太腿に鋭い痛みが走った。 「ぃ っ」  ぱちんぱちんと定規を弄ぶ音がして、先程はそれで叩かれたのだと……理解する頃には二度目が振り下ろされていた。 「  っ」 「早くして」 「  、はい  」  最初に叩かれた箇所がじんじんと痛み出し、追うように二度目に叩かれた箇所が痛み出す。それは体を動かすと攣れるように歪んで更に熱を持ったような痛みを訴える。 「暴れないように」  ぶっきら棒にそれだけを言うと、手袋を嵌めた医者の指が触れたのが分かった。 「ひ  ────  」  本来なら出すばかりに使うソコを押し広げられ、指が入ってくる感触に全身が粟立つ。

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