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青い正しい夢を見る 18

 Ωだと分かる前までは、何ら変わりない扱いを受けていたのに…… 「ありがとうございます  」  男女とは違うもう一つの性。  バース性に於いて最も少ない人口である。  男女共に妊娠出産する事が出来る。  そしてαとΩは番になる。  学校では、その程度しか教えてくれない。  Ωの社会での扱われ方がこんなあからさまな程蔑まれたものだとは知らなかった。 「  心配してもらえて、嬉しいです」  だから、一変した生活の中で彼女の優しさは救いだ。 「    私の子供も、オメガなの」  小さく困ったような笑みは疲れを隠しているように見えた。 「お子さん が」 「  だから、遥歩さんの事も心配で   」  ぽつん ぽつん と話してくれた野村さんのお話は、嫁ぎ先でΩを産んでしまった為に離婚する事になってしまった と言う、僕が聞くには重い物で、経験値のない僕はなんと言葉を返していいのか分からずに眉を八の字にして顔を伏せるしかない。  Ωを産んでしまったが為に離婚になって実家預かりとなった と寂しげに言ってから、小さな女の子の写真を見せてくれた。  麦わら帽を被ったその少女は爛漫な笑顔をこちらに向けていて、幸せなのがありありと分かる表情だ。 「可愛いですね」 「ええ   可愛い子、だったの」  その言い回しにひやりとして呼吸が乱れてしまい、それを野村さんは気がづいたのか小さく「ごめんね」って謝ってきた。 「オメガの子って体が弱いの。だからね、遥歩くんもきちんとお医者様に診てもらって欲しいの」  少し色褪せた写真を愛おしそうに撫でてから、野村さんは僕の首のガーゼを指さした。 「   ありがとうございます」  彼女の子供が何を理由に亡くなったのかまでは、申し訳なくて聞けなかったけれど、野村さんがその事に未だに悔恨を抱いているのだけは分かった。  障子を通して部屋に入る光は昏く青い。  闇の黒さが和らぐと青になり、じっと見てはないけれどやがて桃色や橙色、黄色、白が混ざって夜が明けて行く。 「      」  目を、閉じていた筈なのに、どうしてだかその移り変わりを覚えていた。

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