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花占いのゆくえ 4

「これは  」 「あ?ああ、ほら、さっき言っただろ?ベータでも番える人が出てきているって。オメガだけじゃなくてベータからも探す事が出来るよって項目」  運命の番は、αとΩの間にだけ存在する。  先生はそうではないと言っていたけれど……  オレはその項目の上で、何度も何度もボールペンの先端を鳴らした。  このちっさい同級生の態度はでかい。  つんと唇を突き出しつつふんぞり返って……って、そうしないとオレの顔が見えないってのもあるか。小動物のようにもじもじと肩を揺らしたり、ぷうっと頬を膨らませたり、睫毛ばさばさの瞼をぱちぱちさせたり、落ち着かない態度を取ってからすっと息を吸い込む。 「   ケガさせて  ご、ごめんなさい 」  消え入りそうな声でしっかり謝ってくるのは、エライと思う。  自分の非を認めて、相手に謝罪 って言うのは、簡単そうに見えて難しい。  オレにそれができるかどうか聞かれると、厳しい。  でもそれを押して六華が謝るから、オレも素直に謝罪を口にした。 「オレも、しつこくして悪かったよ」 「ん  」  このちびっこに投げられて肋骨がイカれたなんて、恥ずかしくて笑い話にもなりそうにない。実際、前の彼女にはそれで振られたし…… 「でもな、あれだけは許さねぇからな」 「   薫の、マーキング?」 「オレがっどれだけ気ぃ使いながらっ気付かれねぇようにマーキングしてたと思ってるんだ!!」 「知らないよそんなの。俺わかんないし」 「分かんないしじゃねぇよ!おかげで   っ」  ぐっと泣きそうになって言葉を区切れば、同じ振られた者同士で思うところがあったのか、六華もぐっと言葉を飲んで涙ぐんだ。 「   漁夫の利ってこう言うことかぁ……」  ふぅ と肩を落とす六華に倣ってオレも肩を落とした。  α性の自覚と、薫の体の特殊性について知ってからこちら、どれだけ苦心して気づかれないようにマーキングをし続けたことか。 「オレのマーキングのお陰であいつは今まで無事だったんだ!なのに……」  線の細い肩や、サラサラの黒髪、無垢な黒い瞳を思い出す。  無防備な、人を疑うことを知らない、周りがどう言う目で自分を見ているかなんて何も考えてない……  何より、あの甘い匂いが……  くらくらするほどいい匂いが、人を惹きつけているんだと分かっていない。 「でも勝手にマーキングするのはセクハラ」 「うるっせぇよ、この詐欺オメガ!」 「詐欺じゃないよ!言葉が足りないのは嘘じゃないもん」  ぷくーと頬を膨らまして抗議してくるが、こいつはそんな可愛らしいタマじゃない。 「詐欺だろ」 「詐欺じゃない!」  丸く膨らんだ頬を突いてやると、ぷしゅっと空気が抜けて、つんと不満げに尖ったままの唇が残った。

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