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花占いのゆくえ 3
「だから、君みたいな迫力のあるイケメンは、アルファ因子の優性が強いだろう?」
「はい そう言われてます」
それがあるから、薫にマーキングし続ける事が出来たんだ。
「元々黒髪の多いこの国で、色素が薄いと良く目立つだろう?目立つと言う事は人目を引く、引くと言う事はモテやすい。オメガ達もそれが優れたアルファの証拠だから群がってくる と。と、言う事は君は優性に優れたアルファって事だ」
舶来の人形の様だと言われたこの髪と目に、そんな理由があったとは知らなかった。
ただ親譲りなだけで、そう深く考えるほどの感慨もない程度のモノだ。
「アルファ因子が優れてるとモテるよ~じゃあこれに必要事項書いてね」
マッチング申し込みの用紙には、氏名年齢の他に好みのタイプや相手に求める条件、趣味、自己PRやら様々な項目があって……
面倒臭そうでやっぱりいいです と言って紙を突っ返したくなる。
氏名年齢はともかく、好みのタイプ……で手が止まった。
「好みは、やっぱり可愛くて守ってあげたくなる感じの子?」
「え?え……どうだろ、黒髪が可愛いと思います、黒い目がくりっとしてたらいいな とか」
一見頼りなさそうな感じだったりもするんだけど、ちゃんと芯があって、ダメな時はダメって一歩も引かずオレに向かい合ってくれて、それでオレが折れる事が出来ずに困ってると「しょうがないなぁ」って言いつつ世話を焼いてくれるような子がいい…………と書きそうになって、スペースが足りない事に気が付いた。
別用紙を用意してもいいのかどうか聞く前に、書こうとしていたことをすべて取り消して一言だけ書いた。
──── バニラの匂いのする子
「具体的に出るんだね」
「あっやっ 匂いって言うか、味って言うか、バニラが好きなんで」
「フェロモンの匂いを既存の匂いに置き換える研究って、まだまだ途中で、そこは保証できないけどいいかい?」
「皆、同じ匂い嗅いでるんじゃないんですか?」
「それぞれだね、同じフェロモンでも水仙っぽいって言う人もいるし、梅だって言う人もいたから、そこは受け取り手によって変換されるんじゃないかな?」
そう言うものなのか……と、頷きながらシートを埋めて行くと、一番下の項目に気が付いた。
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