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花占いのゆくえ 7

 それでも、負けじと目に力を込めて睨みつけていると、いい加減に雰囲気を察したのか六華が慌ててオレ達の間に入り、不器用な張り手で仁を叩いた。  手を上げた時は咄嗟に止めようとも思ったが、あの細腕でこの大男が叩かれた所で痛くも痒くもないだろうと、庇うのを止めた。  実際、ぺちん と聞こえた音は蚊を叩き落した時の方が鋭い感じだ。 「なんでそう、何でもかんでもケンカ腰なの!」  六華のぷぅっと膨れる頬は、オレじゃなくても突きたくなるらしい。  つんつんと突いた仁は空気の抜けた頬を見て「ぷっ」と笑ってから、銀花が待っているから と六華を連れて行った。  それを見送るけれど、呻きたくなる。  背の高さから雰囲気から顔立ちまで、そんじょそこらのαより明らかに格上なせいか、仁は人目を集め捲っていた。  医者の言葉を思い出すなら、優性の強い αだ。 「なるほど  あんなアルファに慣れてたんなら、オレのマーキングなんてあってないようなもんだな」  薫に施したマーキングに怯まずベタベタしていた理由はこれだったとかと腑に落ちる。 「はーぁ……」  二人が離れた為に和らいだ口の中の苦みを誤魔化すために、ポケットに入れてあったバニラ味の飴を一粒口に放り込んだ。  これで一人、いや 独りか。  家に帰ったからと言って両親がいるわけでもなく……  結局、いい匂いをさせていたΩの恋人達は運命じゃなかったようで、オレの傍には誰一人いない。  薫を求める一方で、運命を求めてやまない気持ちがあるのも確かで、どうにも切り替える事が出来ないし、湧き上がってくる切望感にうんざりする。  運命の番 が、やっぱり欲しいと思う。  ただ……医者の言った『問答無用で人生の最優先事項になるかけがえのない人』と言うならば、薫しか思い浮かばない。  親に置いて行かれて寄る辺ないオレに寄り添ってくれたのは薫だけだったし、オレがどんな試すような事をしても薫だけは困った顔をしながら受け入れてくれた。  オレのダメなところを叱りながら、それでもしょうがないなって…… 「  ……っ」  口の中の飴を噛み砕くと思いの外固かったようで、骨に響くような衝撃があった。  でも砕いた分、口の中に甘いバニラ味のミルクが広がる。  大好きな味のはずなのに、バニラ味のそれが今は何だか苦くて、甘いと信じてつい舐めてしまったバニラエッセンスを思い起こさせた。

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