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花占いのゆくえ 30
オレを煽るため と言うのなら正解だけど、牽制するためなら大きな間違いだ。
あんなライバルの名前を出されて引き下がるαなんかいない!
「ね?かおる、お願い。ヒート辛いでしょ?」
ここで忠尚がいるから大丈夫とか言われた日には、殺しに行ったかもしれない。でも幸いにも薫はぱぁっと頬を赤くしただけで、何も言葉を言おうとしたなかった。
「それに、アルファにマーキングしてもらうのは医者も勧める方法だろ?」
「……っ」
指で弄ぶ髪がするりと逃げる。
でも触れ合っている部分から薫の体温で移ってきて……心地いい。
薫の体温、大好きだ、
この温もりだけは、手放したくない、
「医療行為だって。あんまり酷いとおじさん達も心配するでだろ?」
「そう……だけど……」
「かおる、オレは薫が大好きだよ」
ちゅっとワザとらしい音を立ててこめかみに口づけると、腕の中の細い体がぶるりと震えたのが感じられた。
手の中で小さな生き物がもがくようなその動きに、αの征服欲がくすぐられて……
抵抗される前に顎を掴んでさっとその唇に吸い付くと、薫の体がぎゅっと固くなって拒絶を示して逃げようとした。
それを、引き戻して、押さえつけて、地面に押し倒されて動けなくなった薫は蝶の標本のようだ。
違いがあるとしたら……ひくりひくりと嗚咽を上げているところ。
「なん なんで、こんな、しちゃ 駄目なんだよ?俺にはもう、た ────っ」
薫をさも自分の物だとでも言いたげに隣に立っていたあの男の名前なんか聞きたくもない!
噛みつくようにもう一度キスすると、勢いが過ぎたのかカチンとお互いの歯が当たって……
「っ⁉」
「ぃ っ かおる、ごめ 」
金臭い味に正気に戻されたけれど、それでも薫をオレの下から逃がす気はない。
「血、出てない?」
「平気……だから、退いて?」
さっきまでの追い詰められた風ではなく、オレに言い聞かせる口調で優しく言われて、ぐっと痛みのある唇を噛む。
「傷があるのに噛んじゃ駄目だよ!」
「 じゃあ、噛まないから、代わりに少し触らせて?ね?触るだけ」
怪訝な顔をしてオレの提案に頷こうとしたけれど、それは長い付き合いがそうさせるのか、はっとしたように首を振ってオレの下から慌てて抜け出そうとする。
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