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花占いのゆくえ 47
オレの与える振動に従って、真珠のような涙が転がり落ちては制服に染みを作る。
「オレの方が絶対に薫を幸せにする!絶対する!」
小さな子供のわがままのような言葉しか浮かばなかったけれど、今のオレが言える言葉なんてこれくらいの物だ。
「薫もオレを好きだろ⁉」
「 っ」
「だったらそいつと別れてオレを待っててよっ!」
ベンチが軋んで悲鳴のような音がする。
それを縫うように、薫の悲鳴のような声が響いた。
「ワガママばっかりっ‼俺の前で他のオメガといちゃつく癖に!」
「だって!運命が隣でも薫が好きだって確認しなきゃだろ⁉」
「っ‼その度にっ俺が傷ついてるのわからなかったの⁉」
怒鳴り返されて、今度はオレが言葉を飲む番だった。
「か、かおるは いつも笑ってたから、気にしてないんだと 」
「そんな訳ないよっ!運命の相手って言うからオメガならいざ知らず、ミナトさんはベータでしょ⁉ …………っじゃあ、もう、俺、……どうしていいのかわかんないよっ!」
わぁっと声を上げて泣き出した薫を慌てて抱き締めて、胸元が涙で湿って行く温かな感触に息を詰めた。
「オメガだから諦められたのにっ!」
「薫、オメガならオレの番になってくれた?」
「なっ いきな、り 」
「かおるも、オレを好き で、いいんでしょ?」
そっと頬を包み込んで顔を上げさせると、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔が見えた。
汚い なんて思うこともなくて、できるなら全部舐め取ってしまいたい。でもそれをしてしまうと、薫が気絶してしまうかもしれないからぐっと我慢して、服の袖で拭うだけにする。
「かおる、オレのこと好き?」
「そ、の、聞き方、ずるい 身勝手!デリカシーなし!思いやりもなし!ワガママ!好き勝手して!自分が世界の中心だと思ってる!」
「うん、うん」
まだまだオレを非難しようとする口を塞いだ。
いつ触れても、甘い感触のするそこを舌でくすぐり、開けるようにせっつく。
「き、ちょ 」
「キスさせて、お願い」
至近距離で瞳を見詰め、懇願の感情を込めて薫に言うと抵抗の力が無くなって……
唇は柔らかくて、甘い。
小さな白い歯をなぞってやると小さく震えて、その奥の温かで慎ましい舌を見つけてお互いの舌を絡めた時には、また涙がぽとぽとと流れ始めていた。
「泣かないで、幸せにするから」
「ちが、 こう言うのダメなのに、お、俺には忠尚さんがっ いてっ こんなことしちゃ……」
そう言って泣き続けるけれども、その手はオレを拒否しないし、角度を変えて改めて深く口づけした時も従順に受け入れてくれる。
ブレザーを掴む手が快感に震えているのも、伏せられた睫毛の下の頬がバラ色に染まっているのも、すべてオレを肯定的に受け入れてくれているからこそだと思う。
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