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Dog eat Dog 4
毛布のような毛艶の髪をウィッグに押し込めて、そばかすだらけの顔を化粧で隠して……Ωだとしても貧弱すぎるひょろひょろの体を女性ものの服で包めば、Ωらしくないオレの外観でもマシになる。こうやって変装をして昼間の鬱憤を晴らすためにオレは夜の街でαを引っ掻ける と言う訳だ。
化粧の腕を磨きに磨いたせいか、面白いように食いつくαを逆に犯してやる訳だがー……
これがナカナカに、ストレス発散にはいい感じだ。
「……と、これは拾っておかないと」
滑らかな靴の爪先に当たった円筒形の物を持ち上げる。
ラベルも何もないペン型の中身はー……
「アルファ用抑制剤さまさまだな」
ちゅっと口付けて落とさないように、この大きさで役に立つのかと思わせる小さなサイズのバッグに大事に仕舞い込んだ。
貧弱なオレは見た目通りの腕力だけれど、コレがあればどんなに体格差のあるα相手でも組み敷くことができる。
――――α用抑制剤
これを打たれたαはしばらくの間ぐったりして動けない。安っぽいおもちゃの手錠で拘束できてしまうほどだ。これがなければオレなんて、瞬殺KOでヤり返されておしまいだろう。
こう言ったことがあったりするから、α用抑制剤の入手は厳しく取り締まられていたりするんだけど、まぁ、自分で作れるならその辺はクリアってことだ。
犯罪か犯罪じゃないかで言えば犯罪なのだろうけれど、αだってΩとセックスできると信じてついてくるし、結果的にΩとセックスしてるんだからその辺はグレー。
オレは女の子だとは言わないし、突っ込んで欲しいとも言わないんだから、相手が勝手に勘違いしているだけだ。
……っつっても、ヤバいことをしているのには変わりないんだけどね。
ただ警察の厄介になったことがないのは事実。
なぜならαにとってΩに首を噛まれるなんてそんな恥ずかしいこと、一等いやで、死んでも人に言いたくないから。
「 ひ ひひ、ふ ひ」
歪んだ唇から笑いが漏れて、慌てて口元を押さえた。
α用抑制剤が切れれば腕の手錠なんてあっさり壊してしまうのだから、長居は無用だ。
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