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Dog eat Dog 8

「すっぽかされちゃったみたいです」 「そうですか、ずっと……その、待たれていたようだったので」  襲う相手を物色していたなんて言えなくて、とりあえず恥じらうように髪をいじって俯いた。 「いつから 見られてたのかな?恥ずかしいトコ見せちゃいましたね」  可愛らしく恥じらうなんて素じゃあ絶対無理だけど、こうやって化粧して別人になればするりとできてしまうのだから、人の外見による態度の変化って面白い。  確か、グループ分けして囚人の服と警官の服をそれぞれに着せていたら、次第に態度が服装に沿う態度をとるようになる……とかなんとか聞いたことがあるな、オレのこの行動の変化はそう言ったものなのかもしれない と、思考の海に身投げしかけて思い留まった。  目の前では、αらしい優男が心配そうにオレを覗き込んでいる。  女に優しいのか、Ωに優しいのか、それとも可愛さに弱いのか……  はたまた可愛いΩの女の子だから、この紳士はこうやって待ちぼうけを食らった(らしい)オレを心配してくれているわけだ。  そう思うと、不細工なΩの男であるオレはその守備範囲から外れるんだろう。 「あの……」  その守備範囲以外の奴から犯されたら、この優男の紳士ぶった余裕たっぷりの表情はどんなふうに歪むんだろうか?  首を傾げるふりをして男に鼻を近づけてすん と気付かれないように匂いを嗅ぐと、確かにαの匂いがする。 「……慰めてくださいます?」  今日の獲物は、君だ!  思ったよりも若い印象を受ける男は、柔和な笑みを崩さないままオレのちまちまとした歩調に合わせて歩き、女の興味を引きそうなショーケースがあれば話題を振ってくれる。 「もう少しなんですが……ちょっと歩かせすぎちゃいましたね」 「全然!こうやって楽しくお話しできたから、時間なんて気になりません」  ま、嘘だけどな。  しまった、下ろしたばっかだからか靴ズレが……いてーの。 「知り合いのお店なんですが、お酒が美味しくて  いつかさんにぜひ飲んで欲しいな って」  いつか  今日が五日だからなだけなんだが、この『いつか』を呼ぶ時、この大沢はやけに嬉しそうな顔をする。  お前が微笑みかけてるのは可愛いΩじゃなくて、不細工Ωだよーって今の段階でばらしても、この育ちの良さげなαは驚いていい顔を見せてくれそうだ。  ま、ケツにチンコ突っ込まれてアへりながらイク瞬間には劣るから、そんなことしないけど。

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