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Dog eat Dog 19
Ωの社会的地位が向上したとは言え、まだまだ格下に見られるのが否定できない世の中で、大沢は珍しい存在だったのか……と、先をどんどん歩いて行く背中に思う。
Ωが後ろを付いてくると信じて疑わない自信満々な態度は、蹴りを入れてやりたくなるくらい腹立たしい物だった。
「 背は、同じ くらい、なのかな 」
扉の前でこちらを振り返った時にそう思った。
雰囲気は違うけれど、背格好が大沢と似ている?
バランスの取れた細マッチョとなると、みんなこう言った体になる物なのかもしれないが、オレ自身の体では分かりしょうがなかったし、尋ねる友人もいなかった。
「どうかしたんですか?」
「あっいえっ ちょっと……緊張しちゃって、今からでもお薬を頂きに行った方が、中田さんの御迷惑にならないんじゃ……っ」
言葉が途中で遮られて、続ける言葉は高そうなスーツの生地に吸い込まれていく。
身長差があるせいか、ぎゅうっと抱き締められてしまうと窒息しそうだった。
雪崩れるように入ったホテルの部屋の入り口で抱き締められ、二人が動かなければそこは水の底のように静かな場所で、耳が可笑しくなったのかと錯覚を起こしそうだ。
温かい腕がオレに欲情してしがみついている。
αから求められて、Ωの本能的な部分は喜んでいると感じるのに、このαが求めているのは整形並みの化粧とこだわりぬいた女装でミノムシ状態のオレだと思うと、唾を吐きかけて腹に一発蹴りを入れて帰ってしまいたくなった。
所詮、Ωと言うアナでしかオレを見てくれない、そんな薄っぺらたいのにこちらを見下しているαに腹が立って仕方ない。
「 ぁ、中田 さ 」
ゆったりとした柔らかな生地の上から、中田の手が尻を揉むのを感じる。
αが、
Ωに、
欲情しているのだと思うとイラつきと嘲笑が入り混じって体が震え、結局本能に逆らえずにΩに突っ込みたがるαに笑いが零れた。
「ふ ひ ひ」
タイミングを見計らって、小さな鞄からこっそりと取り出したペン型の注射器を、オレの項の匂いを嗅ぐのに夢中になっている中田の足へと突き立てた。
上等なスーツは生地もいいんだろう、ぐっと力を入れた時の手ごたえが他の物と全然違う。
「────っふみ っ⁉」
高そうな眼鏡の向こうの双眸が驚きに見開かれて……
床へと力なく崩れる姿を見た時は気持ち良さに失禁しそうだった。
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