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Dog eat Dog 37

「んー……まふぉかしゃーん  」  言葉がまともに紡げないほど眠いなら、ここではなく自分の家に帰ればいいものを。 「あんた何してんだよ、不審者で通報されるぞ」 「あー……二回ほど」 「いつからいるんだよ!」  「んー……」と呻くと、時宝は返事をしなくなり、器用にドアにもたれながらすうすうと寝息を立てている。  どうしたものかと思案に暮れるも、オレの出す答えなんて決まっている。  ピンポンの連打と、惨めったらしくオレの名前を呼んで説明してくださいと懇願する声と、宥めすかして連行しようとする警察の声と……  これは引っ越しを考えなければならない事案だろうか?  多分、警察がいてくれるから誰も文句を言いに来ないんだろうけど、絶対近所迷惑になっているだろう。  とっとと持ち帰ってくれ!と悪態を吐いて着替えようとした時、 「ぢっ違゛う゛ん゛です゛ぅぅぅ!マイスイートなんです!ダーリンなんです!ハニーなんです!パートナーなんです!運命なんです!番なんですぅぅぅ」  一際大きい声でそう叫ばれて……「番じゃないです」と呻きながら観念してドアを開けた。 「は、は 恥ずかしくないのかよ!あんな大声出して!お巡りさんだって、こいつと番?みたいな顔してただろ!」 「恥ずかしくなんかないよ!」  本気で泣いていたのか、赤い目で真剣にオレを見詰め、大事な宝にでも触れるように手を握り締めてくる。大きくて柔らかく、温かで幸せを表すような手に包まれて、今日瀬能先生に感じた恐れや、仕事がなくなるかもと言った恐怖が和らぐ気がした。  ほ と絆されそうになって、急いで首を振る。 「嘘吐け」 「えっ 何が恥ずかしいの?」  本気でキョトンとした尋ね方は、本当にわからないと言いたげだったが、オレは薬でぼんやりしていても忘れてはいない。  オレの化粧を剥ぎ取った後、笑ったことを!  あの時のことを思い出すと、すっぴんでこいつの前にいるのが恥ずかしくなってぷいとそっぽを向いた。オレに似ているオレの部屋は悲しくなるほど愛想がない、だからなのかこの部屋に立つ時宝だけがなんだか別の次元の存在のように光って見えて、一瞬電飾でも仕込んでいるんじゃないかってバカなことを思ってしまうくらいだ。  それくらい、この男の存在感は華やかだ。  そんな男にぐいぐいと顔を突き付けられてしまうと、どうにもこうにも尻の治まりが悪い。

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