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Dog eat Dog 40

 ボソボソと口の中で言葉にならない言葉を呻いて、人の温もりに包まれることに慣れないオレは、居心地の悪さを感じてそこから逃げようとした。 「俺の番なんか嫌?そんなに嫌?俺言ったよね?運命を感じないかって!」  言葉が出なくて、抱き締めてくれる腕に力無く寄りかかることしかできない。αに「運命だ」って言われることに、憧れないΩなんているんだろうか?  Ωらしさのかけらもないオレには、無縁な言葉だし関係ないと思い込んでいたけれど……  あんなことがあった相手を安易に部屋に入れてしまえるくらいには、関わりがあったのか? 「  だって」 「まどかさん?」 「オレの顔見て笑っただろ……」 「顔?いつ⁉︎」 「ま……睫毛剥ぎ取った後……」  そうは言っても、あのタイミングでは時宝は覚えてないかもしれない。  オレの発情に中てられて、分別らしい分別がついていなかったんだから…… 「睫毛?」  分別がついてないから…… 「ああ、あの時か!」  オレを噛んだりしたんだ。 「だって、俺の番だ!って確信した時だもん!そりゃ笑うでしょ!」  ………… 「ラットだったからだよ」 「へ⁉」 「それは、ラットだったからそう思っただけで、オレのヒートのせいだ」  悲しそうな顔でオレを引き寄せて、時宝は言葉を探す間に唇を舐めて濡らしていた。  温かくて、しっとりしていて、熱くて、甘い、唇だ。 「……そう言えば、初めてキスしたな」  あんな息が出来なくなるものだとは思ってもみなかった。  柔らかくて、なんとなく甘くて、火傷しそうなほど熱くて、クラクラするような、すべてを貪るような激しさのあったあのキス…… 「── は?」  ぽつんと漏れた言葉に低い声が返って、猫背気味なのに思わずぴっと背筋が伸びる。 「は、はじ、  ⁉キスも⁉」 「  な、んだよ、そりゃ、   そうだろ」  歯、特にαの歯なんて噛みつくためにあるようなものの傍に、レイプ中に顔を持って行く勇気はない。あの鋭さの歯なら唇くらい容易に噛み切りそうだ、そんな危険を冒すほど馬鹿じゃないつもりだ。  だから、そうだな……あれが、初めてだったな。 「ぅ  あ 」  ぶるぶる と腕が震えるせいでオレの視界がブレる。

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